目指せ1600km/h ひとりの男の夢 「ブラッドハウンド」物語り

2017.11.26

「やってみるまで、わからない」

「われわれは、主としてクルマ周辺の衝撃波の形と砂漠地帯でのホイールの接地性を検討しています」とチャップマンは言う。

「シミュレーションで大まかなところはわかりますが、正確なところは、実際にやってみないとわかりません」

このため、チームは砂漠地帯で2、3カ月かけて試験に次ぐ試験を行い、すべてのデータを取得し、分析し、評価するまでは次に進まない。新記録を達成するだけのために。

いかに違うものなのか、なぜ実際に走らせる以外に方法がないのか、チャップマンはわかりやすい例を挙げる。

音速を超えると、タイヤのグリップよりもホイールにかかる空気圧のほうがステアリングに影響する。つまり、超音速の舵になるわけだ。

もうひとつ、英国の地上最高速度チャレンジの伝統に従い、このプロジェクトでは自動車用品店にあるような日用品をクルマに使っている。良い例がロケットに点火する引き金だ。

航空宇宙用の「引き金」は数十万円だが、破壊検査を受けた民生品ならどこのDIYショップでも安価に入手可能だとチャップマンは言う。グリーン中佐がナーモに点火するとき、家庭用ドリルの引き金を引くのはこのためだ。

ブラッドハウンドSSCプロジェクトが魅力的なのは、恐るべき野心と必要とされる胆力のためだけではなく、そのエンジニアリングが素晴らしく実際的で想像力に富んでいるからだ。

世界最先端の技術が本来の目的以外で使われ、それらが電気ドリルの引き金のような日用品と違和感なく調和しているのがわたしはとても好きだ。

チーム皆の幸運を祈りたい。天が味方をしてくれれば、今から2年と少しあと、勇猛なひとりのドライバーが時速1600km以上で地上を駆け抜けていることだろう。

 
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