現代車は個性に欠ける? 英AUTOCARが選ぶ、愛すべき個性的なクルマ9選 後編

公開 : 2018.08.19 06:10  更新 : 2021.03.05 21:43


プジョー205 XS

リチャード・ブレムナー

プジョー205。この車名に、GTiを付けないで口にすることは、極めて珍しい。ミニだけでなく、思わずミニ・クーパーといってしまうように。205GTiは、1980年台という時代を超えて、今振り返っても最も優れたホットハッチの1台だと思う。205自体の持っていた素晴らしさを、完全に超えたイメージを作ってしまった。

GTiとCTiカブリオレを除く、すべての205には柔らかく滑らかなサスペンションが装備され、フランス車であることを明確に示していた。世界各国の道路に平均化させるのではなく、フランスの道に最適化させる形で、デザインされていた。

1990年代以前、多くのクルマは、自国の地理的条件や志向に沿って設計されていたはず。英国の場合、立ち遅れていた高速道路の整備を反映するかのように、エンジンの信頼性は低く、階級を意識したかのように、クロームメッキとウッドパネル備えていた。

イタリアのクルマはエンジンの排気量で課税される。小粒で、高回転域でもエンジンの振動は少なく、見た目以上に速く走った。もちろん、ドイツではアウトバーンの追い越しに適したクルマを作っていた。

フランスでも、街路樹がむき出しで並び、速度域の高い危険な国道のために、高速域でのスタビリティは必要だった。しかし、路面が荒れ、曲がりくねった細い道でも、充分な乗り心地が求められた。

その結果、優れたグリップ力と揺るがないスタビリティを備え、クッションのような乗り心地に、ゆったりとしたボディロールを発生させるクルマが生まれる。中にはこれらの条件を満たせないクルマもあったが、205はそのすべてを備えていた。

スタイリングは丹精でフランスらしさに溢れ、シックで美しく仕上げられている。シトロエン・アミやヴィザ、ルノー4や12という残念なデザインの後だったから、嬉しい驚きでもあった。

954ccエンジンを積んだベーシックモデルの205XEでも、充分に楽しめるハンドリングを備えていた。幅の狭いタイヤに、滑らかな乗り心地、アシストの付かないステアリングからは明確なフィードバックが得られ、グリップが限界に近いこともわかりやすい。スロットルペダルでノーズの向きを変えることができ、GTiのようにスピンに陥るリスクも少なかった。

そんな205でも、わたしの中でのベストモデルは、GTiではなく、1.4 XS。XEより速く、乗り心地も硬いが、GTiよりは柔らかくレスポンシブ。205の典型ともいえるモデルだ。

余剰なパワーや太すぎるタイヤ、盛られすぎた価格は、必ずしもドライビングを素晴らしいものにしないということ。そして、もっと自国に合わせた特徴をクルマに持たせても良い、という2点を、この205は今の時代に示してくれていると思う。

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