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2018.11.26

なぜ日産はルノーに提携見直しを強く迫れる? ゴーン会長逮捕

政府間と民間、両レベル発のメッセージ

しかし日産の取締役会では同時に、ルノーとのアライアンスは継続する意向が確認された。

アライアンスの瓦解はありえない、という立場は今のところルノー側も共有されていると考えていいだろう。

そして前回に書いた、もしかして日仏政府間で経済的な宣戦布告が起きていないか? という話だったが、どうやらアグネス・パニエ・リュナシェ副大臣の来日は、本当に間が悪かっただけのようだ。

フォーラムに出席したひとびとに話を聞くと、終了間際になってゴーン逮捕の一報が入ったため、その場はかなり気まずいムードが漂ったという。

だが逮捕翌日にすぐ、世耕経産大臣とル・メール経済/財務大臣は電話会談し、「ルノーと日産のアライアンスに対する両政府の強力な支援と、成功を収めているこの協力を維持する意志を共有する」と、共同声明で発表した。

大阪万博のために翌日から世耕大臣はちょうどパリに渡ったが、着いて早々にル・メール大臣と会い、握手して前々日の共同声明を再確認するという念の入れようだった。

「成功を収めているこの協力」とはフランス語では「cette coopération gagnante」とされ、「成功裡にある協業関係」「サクセスフルな協業関係」という意味合いだが、いずれか一方の国だけに資する成功とは扱われていない。いわば理念的には中立的というより、玉虫色にもとれる声明だ。

ルノーの筆頭株主であるフランス政府と、表立って市場介入できない日本政府では立場が違うという指摘もある。

ところがルノーの43.4%に次ぐ日産の大株主が、小口に分かれてはいるが日本マスタートラスト信託銀行や日本トラスティ・サービス信託銀行であることは注意されたい。

要はGPIF、日本政府の肝煎りである年金ファンドが第2位の株主と推測できるのだ。

いわば仏政府がルノーに対するほどの目立った持ち分でも「ものいう株主」ぶりでもないが、日本政府と日産の関係は遠からず似たもの同士と考えた方がいい。

日仏は互いに自由主義経済と開かれた市場と標榜する立場にあり、前者が後者に20年前に資本注入と再建を任せたことは確かだが、建て前と本音の発現の仕方が元より180°違うのだ。

元々、2015~16年当時経済産業デジタル担当大臣としてフロランジュ法を通じてルノーへの仏政府の発言権を強めたマクロン大統領と、長い間、不和にあったゴーンとの間にはふたつの密約があったといわれる。

ひとつは、仏政府は2倍になったルノーにおける議決権を戦略的な議題にしか用いないこと。

もうひとつ、ルノーは、43.4%をもつ日産に対して優位をふりかざすことをしない、というものだ。

当時はもはや、日産からの配当金がルノーの収益の半分に資するだけでなく、フランス国内の余剰化した工場の生産ラインを日産マイクラ(マーチ)に充てて稼働率を引き上げるといった方策も採られていた。

平たくいえばフランス国内の雇用を日産の仕事で確保するようなやり方だった。

ゴーンはアライアンス内の不均衡がもはや不公平になりつつある雰囲気は重々承知していただろうし、云い方は悪いが「日産というカネの成る木」を、仏政府の求める「統合化」という負担増で枯らしてしまうことを、もっとも恐れたはずだ。

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