AUTOCARアワード2019予選 真のアイコン選手権 決めるのはあなた(前編)

公開 : 2019.03.16 09:45  更新 : 2019.06.03 08:54

ジャガーXJ

現行モデルまで、一度もオーナーになったことのないドライバーの98%が、その特徴的なリアだけでジャガーXJを識別することに成功している。天地に薄いトランクエンドはもともと、独特の三角形をしたリアランプに挟み込まれていた。

その特徴的なリアのルックスにはもっともな理由があった。初代XJのスタイリングモデルのなかには、ジャガーEタイプを彷彿とさせる、徐々に先細りになるテールデザインが含まれており、実際、4ドアのEタイプというイメージには、天地に低く、伸びのあるサイドラインが求められていた。最終的に、テールのテーパー部分をカットしただけでスタリングは確定し、その結果が、初代XJの非常に印象的なサイドビューとなっているのだ。

しかし、Eタイプに着想を得たからこそ、XJは独特のモデルとして、時代を超越した存在となることに成功している。このクルマのエンジニアリングにおけるポイントは、その卓越した洗練性と乗り心地にあったが、一方で、サルーンモデルとしてのスポーティさは、新たなレベルへと到達しており、低くセットされたシートポジションと大きなグラスエリア、さらにはミニマルなデザインのダッシュボードが、XJの運転感覚を独特なものにしていた。


XJシリーズを初めて運転したのは1993年のことだった。退役間近の長期テスト車だったXJ40を、バターシー発電所へと最後の撮影に連れ出したのだが、その時ゴミ収集車に乗ったひとりの男が近づいてきて、「むかしこのクルマに乗っていましたが、トランクフードに錆はありませんか?」と質問してきたのだ。

確かに錆はあったものの、この経験は中古のXJが労働者階級のひとびとの間で人気のモデルだったことを思い出させてくれた。

数週間後、新型X300がやってきたが、そのスタイリングはクラシックなXJにより近づいてはいたものの、中味は革新的なモデルだった。フォードのもとで、組立品質は格段に向上しており、真っ黒なダッシュボードを持つスーパーチャージャー付モデルは驚異的な走りを見せてくれたが、その速さは狭いキャビンと路面の近さによって、より強調されていた。

一方、同じ年、4台のラグジュアリー・エグゼクティブサルーンの後席に座って英国を横断するという特集記事にも参加している。Sクラスは巨大で快適なモデルであり、レクサスは落ち着きには欠けるものの、スペースには優れていたのと対照的に、XJの狭さは際立っていたが、それでも、クロームとウッドに囲まれた懐かしいインテリアは、特に夜間のドライブでは最高の雰囲気を味わわせてくれた。レッグルームの広さだけが勝負を分けるわけではないのだ。

2面性がこのXJの魅力とも言えるが、このクルマは、どのモデルであっても、わたしの心に非常に深い印象を残している。長年の間に数百台ものクルマを運転してきたにもかかわらず、もっとも印象に残っているのは、盛夏の週末、デイムラー・ダブルシックスで行った長距離ドライブと、半年間だけX350のオーナーを務めたことであり、X350には本当に楽しませてもらった。

同じく最後にオーナーとなったXJがX358だった。残念ながら、市場で見かけることは稀なモデルだが、つねに他のサルーンとは一線を画してきたように、このXJも運転して素晴らしいモデルであり、洗練された美しいスタイルで、リラックスできるクルマでありながら、開けた道路であれば、その俊足ぶりを発揮してくれた。

ジャズを聴きながら、夜のロンドンでよくX358を走らせていた。夜の空いた市街地でこのクルマが発する雰囲気を味わったのは、いまだに最高のドライブのひとつとなっている。
(ヒルトン・ホロウェイ)

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