AUTOCARアワード2019予選 真のアイコン選手権 決めるのはあなた(前編)

公開 : 2019.03.16 09:45  更新 : 2019.06.03 08:54

ロータス・エリーゼ

間違いなく今回のノミネート車両のなかには、ひとびとを乗せて英国中を走り廻っているモデルが存在する一方、この実用性に欠けた2シーター・スポーツカーにはまったくそんなことは当てはまらない。

さらに、他のモデルが、有名な映画に登場したり、われわれの多くが子供時代の移動でお世話になったりしたことで、文化という面でも重要な存在となっている一方、このクルマにはそれも当てはまらない。

実際、ロータス・エリーゼというクルマに乗ったことのある人間はそれほど多くはなく、所有となればさらに少ないだろう。だが、だからこそ、フィアット500フォルクスワーゲンビートルを好むようなひとびとにこそ、登場からの23年間、常にクラスを越えた最高のドライバーズカーの1台であるこのクルマをお勧めしたいのだ。ドライバーズカーとして、このクルマに太刀打ちできる存在などあるだろうか?

エリーゼをお勧めする理由はこれだけではない。エリーゼは英国が誇るスポーツカーブランドのひとつを苦境から救ったというだけでなく、このクルマ自体が革新的で興味深いモデルでもあるのだ。

例えば、エリーゼのシャシーは押出成形されたアルミニウムで出来ており(もしオモチャの粘土を型から絞り出したことがあれば、それが押出成形だ)、このクルマを非常に軽量且つ強固なモデルにしている。さらに、徐々に重くなっていったとは言え、その車重は1996年登場の初代でわずか725kgに留まっており、現代のフォーミュラ1カーでも、ドライバーを含めればもっと重いのだ。


これまでにわずか2回しか大掛かりなアップデートを受けていないにも関わらず、これほど長くエリーゼが現役でいられるということは、ドライバーとの繋がりを感じさせてくれるスポーツカーをワインディングロードで走らせることの楽しみは、昔から何も変わらないということであり、さらに、25年前に基本的な設計が行われたモデルだと言うのに、時間の経過とともに、このクルマの基本的な設計思想は、ますます時代に相応しいものとなってさえいる。

結局、シングルスピードのトランスミッションと人工的なフィールのステアリングに、リチウムイオンバッテリーと通信用ケーブルでますます重くなったEVに毎日乗らなければならない時代に、ガレージに置いておきたいのは、活気あふれるガソリンエンジンとマニュアルトランスミッション、さらにはノンアシストのステアリングを組み合わせ、混雑する路上でも使い切れるだけのパフォーマンスを備えた小型軽量で機敏なモデルだということだ。そういった点では、ロータス・エリーゼは過去ではなく、未来のスポーツカーと呼ぶべき存在だろう。

フィールに乏しく、過敏に過ぎるステアリングを除けば、エリーゼはそのシンプルで素直なシャシーセッティングによって、運転して素晴らしいモデルであり、適度に締め上げられたサスペンションは、路面不整に出会っても四輪すべてでしなやかに吸収してみせる。

サスペンションが優れたダンピング性能を発揮する一方、落ち着いたボディの動きで姿勢を乱すこともなく、どんな道でもエリーゼは最高のドライビングを味わわせてくれる。そして、それこそがすべてだ。
(ダン・プロッサー)

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