自動車デザインの名門 ロイヤル・カレッジ・オブ・アート訪問 未来のクルマが生まれる場所

公開 : 2019.06.30 18:50

変わらぬ情熱 変化に対応

ケンジントンにあるRCAの本部を訪れている間、スタジオはスクリーン上のスケッチやレンダリングを行う熱心な学生で溢れ、壁や棚はデザイン画やスケールモデルで埋め尽くされていた。

意外にも、RCAではもはやレンダリングやスケッチのやり方は教えていないが、それはこうした手法に関するオンラインのハウツー映像が数多く存在しており、ハローやソープは、こうした基礎的なスキルは、学生たちが入学前までに身に着けておくべきだと考えているからでもある。

心強いのは、RCAに入学してくる学生の多くが自動車への情熱を失っていないことだが、それでも、卒業後には新たな環境への適応を求められることにもなる。「こうした情熱を失って欲しくはありませんし、多くがフォルムこそが自動車であるとの強いこだわりを持っています。ですが、他にも考慮すべき点はあります」と、ソープは言う。

学生たちにとって、新たなモティベーションとなっているのは、グーグルのようなテクノロジー企業がモビリティの世界へと足を踏み入れていることであり、この状況は自動車メーカーにとって、最高のデザイナーを獲得するためのライバルが増えることを意味している。


「学生たちは、グーグルとフォードのような伝統ある自動車メーカーとを同じ目線でとらえており、フォードでデザイナーになる代わりに、グーグルで新たなモビリティを創り出す機会を求めているのです」と、ソープは話す。

もちろん、いまも多くの学生が卒業後には自動車メーカーへと向かっているが、クラウドファンディングによる支援や、中国やシリコンバレーにおけるスタートアップ企業の成功に刺激を受け、授業でのプロジェクトを通じて、商品化が可能なデザインを生み出そうという傾向も強まっている。

こうした状況は、自動車デザイナーの夢の仕事が、自動車メーカーのデザインスタジオにあった時代からは大きな変化だと言える。かつては、まずはドアハンドルのような小さなパーツのデザインから始まり、コベントリーやデトロイト、ヴォルフスブルクのスタジオでキャリアを積み上げていったのだ。

だが、世界は急激に変化しているのであり、RCAが誇る自動車デザインコースも、その変化に合わせて前へと進んでいる。

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