ルノー・スマートアイランド構想 ポルトガル現地ルポ 真のゼロエミッションへ

公開 : 2019.07.07 16:50

二重の利点 制御は複雑

「ところが、いまでは、EVはバランスを保つためのツールとして必要とされるようになっています。再生可能エネルギーや家庭からの発電システムといった電力の供給ポイントと、EV充電器のような需要ポイントが増えるにつれ、電力ネットワークにはさらなる柔軟性が求められるようになっているからです。グリッドを管理しているひとびとも、いまでは再生可能エネルギーを活用するには、EVが必要だと言うようになっています」

「EVと再生可能エネルギーのどちらが欠けても、成長は期待できません」ともフュントゥンは言う。「EVには二重の利点があります。つまり走行中のCO2排出がゼロであるだけでなく、発電からのCO2も削減することができるということです」

「すべてはいかにスムースな電力供給を可能にするかということです」と、マデイラの電力会社で送配電の責任者を務めるホセ・コトリムも話す。つまり、ディーゼルと太陽光、風力というさまざまな発電方式からの電力供給量を、いかに一定にするかということだ。

グリッドへの電力供給に対応していないEVから取り外されたバッテリーが、電力に余力がある場合には蓄電を行い、電力が不足している時には充電を止めるとともに、バッテリーからグリッドへの電力供給可能なEVが、再生可能エネルギーからの発電量が落ちた場合や、急激に電力需要が増えた場合に、グリッドへと電力を供給することで、そうした調整がより容易に行えるようになるという。


聞くだけなら非常に簡単に思えるが、気まぐれな雲や風によって常に出力が変動する、複雑でさまざまな電源を持つ電力ネットワークを安定的に運営するというのは、決して簡単な仕事ではない。

だからこそ、モビリティ・ハウスがパートナーとしてこの計画に加わっているのであり、このミュンヘンとシリコンバレーに拠点を置く企業は、欧州で初めてEV向けの充電とエネルギーマネジメントシステムを販売した1社でもある。

簡単に説明すると、彼らのモニタリングシステムとアルゴリズムは、グリッドに繋がれたEVの電力消費をコントロールしており、単にグリッドからの電力供給を一定にするだけでなく、電力需要が多く、電力料金の高い時間帯には充電を行わないようにするとともに、ポルト・サントでは、EVから取り外されたバッテリーの制御まで行っている。

こうしたバッテリーは廃車となったEVから取り外され、電力供給量を一定にすべくグリッドへと接続されているが、その数は予想よりも少ないものに留まっている。「EV用バッテリーは予想よりも長寿命なため、供給量が限られています」と、フュントゥンは話す。

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