日本車のTVコマーシャル、外国人が海外で運転するシーン 理由は? 多様化で表現にも幅

公開 : 2019.11.04 06:00  更新 : 2021.10.22 10:17

CM起用の人物で特徴を表現する場合も

CMに起用する人物で、商品のコンセプトや特徴を表現する場合もある。

例えばスズキアルトは、初代モデルでは欧州の街中を走らせたこともあったが、近年のCMはターゲットユーザーにしている若い女性を起用することが多い。

使い勝手をアピールするダイハツ・ムーヴ・キャンバスの公式画像。
使い勝手をアピールするダイハツ・ムーヴ・キャンバスの公式画像。

直近のアルトのCMは、母親とお嬢さんが一緒にドライブに出かける設定だ。今は結婚する年齢も高まり、両親と実家で暮らすお嬢さんも増えた。

ダイハツ・ムーヴ・キャンバスも、母親は買い物に、お嬢さんは友人とのドライブに使いやすいことをテーマに含めて開発されている。ただし発売当初のCMでは、若い女性タレントを起用して、スライドドアや収納設備の使いやすさをアピールした。

軽自動車やミニバンのような実用重視の車種では、車内の広さ、シートアレンジ、各種の装備を訴求する実用的なCMも多い。

このようにクルマにはさまざまな訴求点があり、その中から商品コンセプトも考えた上で、内容を選んで効果的に表現している。

商品価値/訴求方法が多様化 表現にも幅

自動車メーカーの広報や宣伝担当者によると、「最近はTVのCMを含めて宣伝がむずかしい」という。

昔の訴求媒体は、TVのCM、新聞や雑誌の広告、自動車専門誌や一般誌の記事程度だったが、今は多種多様だ。

個性的な色でカスタマーにアプローチする例も。
個性的な色でカスタマーにアプローチする例も。

趣味で製作しているブログやユーチューブなどの動画サイト、各種のSNSを含めて、クルマ関連の情報が大小さまざまな媒体で発信され、視聴されたり評価を受けている。

その一方でTVの視聴率や雑誌の売れ行きは低迷して、「多品種少量発信」とでも表現すべき状況になった。どの媒体でどの程度の訴求をするか、という配分もむずかしい。

またCMの内容も商品にとどまらず、商品全般に通じるコンセプトや将来の方向性を示す企業CMも増えた。個々の商品を別々にアピールしていたのでは、効率が悪いこともあり、メーカーやブランドを訴求する戦略だ。

CMが多様化して、外国人の起用や海外での撮影も、この中に含まれる。

同様の理由で、同じ車種のCMが、放映時期に応じて変化することも多い。例えばトヨタアクアのCMは、2011年12月の発売時点では、優れた燃費数値と豊富なボディカラーを表現した。

それが2014年のCMでは、外国をロングドライブする映像に変わり、アクアが冒険をするイメージに一変させている(BGMはドラゴンクエストIII)。

その一方で、富士山などの日本の風景と組み合わせた表現も行っている。

CM映像を見るだけでも、アクアという1つの車種をいろいろな角度から切り取り、さまざまなユーザーに向けて発信していることがわかる。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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