【救急車を避けない】関連あるか サイレン音量、昭和26年から変わらず 20年で搬送時間12.3分増

公開 : 2019.12.15 06:00  更新 : 2020.04.08 21:13

サイレンのスピーカー位置がバンパー裏に

サイレン音が聞こえにくくなった理由はまだある。

近年の救急車には一体型のLED散光式警光灯が採用されるため、従来はルーフ上の設置されていたスピーカーはフロントバンパー裏側に設置されることになった。

日本の最新の救急車。
日本の最新の救急車。    加藤博人

この位置ではサイレン音がバンパーに当たって反射、拡散してしまう。

さらに、スピーカーが救急車の前方に設置されていると発せられたサイレン音は前方に拡散して、ますます周囲のクルマに聞こえにくい状況となる。

建物が多い市街地、交通量が多い幹線道路などで、救急車のサイレンが鳴っているのは聞こえるが、どの方向から来ているのかわからない場合があるのは、これが理由だ。

前述したアメリカの救急車は複数の周波数を持ったサイレン音を状況によって使い分けているので高周波数域が聞き取りにくい高齢ドライバーの耳にも入ってきやすい。

日本の救急車も高齢者が聞き取りやすい周波数帯音域のサイレン音を追加するか、異なる周波数帯のサイレンを組み合わせるなどの対策が必要と言える。

筆者はこの論文の筆頭者である、広島国際大学保健医療学部の安田康晴教授に話を聞くことができた。

安田教授は救急救命士として活動していた経験をお持ちで、自動車メーカーの救急車開発にアドバイスを行う立場にもある。海外の救急車事情にも精通している。

20mまで接近も車内ではほとんど聞こえず

「自動車走行中の車内音量は、走行のみ 43.8 ±1.5dB、オーディオ使用54.6 ± 6.7dB、会話68.4 ± 1.6Db。車内(停車時)に入る救急車サイレン音量は,救急車から自動車までが 10m→51.0 ± 1.6Db、20m→46.4 ± 1.3dB、40m→44.5 ± 0.5dBという結果が出ました」(安田教授)

「つまり、救急車が20mまで接近しても車内で聞こえるサイレンは車内騒音より小さく、10mまで近づいても、オーディオや会話中ならサイレン音は聞こえていないことになります」

海外では救急車がより目立つためのレギュレーション変更が行われている国も。
海外では救急車がより目立つためのレギュレーション変更が行われている国も。

「高齢ドライバーともなれば、さらに条件は悪くなります。ギリギリまで接近しても聞こえない可能性があります」

なお、ここで言うところの「車内(停車時)における救急車サイレン音量」は、エンジンを切って停車している状態での音量となる。

走行中となれば、エンジン音やロードノイズ、風切り音などでさらに聞こえづらくなる。

地味なデザインにも問題がありそうだ。

「日本の救急車は白基調で目立ちにくいのも問題です」

「米国では追突防止のため後部は赤と黄色のゼブラにするようレギュレーションが変更されており、欧州の一部では白から黄色ベースに、さらにチェック柄にしています。フリッカ―タイプの赤色灯や、ヘッドライトが交互に点灯するタイプも欧米では主流です」

「サイレンの音量や音質、スピーカーの設置位置や角度などと共に、外観のデザインも見直す必要があるでしょう」(安田教授)

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