【家族との再会】初代メルセデス・ベンツAクラス(W168型) ふたたびの邂逅 後編

公開 : 2020.03.18 14:20  更新 : 2020.03.18 15:44

英国版AUTOCARスタッフのアンドリュー・フランケルは、かつて所有していたW168型Aクラスを買い戻しました。失敗作の烙印を押されているこのクルマですが、過去20年でもっとも革新的なモデルであり、彼にとっては家族との思い出が詰まったかけがえのない存在のようです。

時代の変化

いまでは初代Aクラスは失敗作の烙印を押されているかも知れないが、実際は決してそんなモデルではなかったのだ。

スウェーデンの自動車雑誌が行った仮想のエルクを避けるというテストで横転してしまったことで、出鼻をくじかれたAクラスだったが、異なるサスペンションセッティングとスタンダードなスタビリティーコントロールさえ備わっていれば、結果はまったく違ったものになっていたはずだ。

ボディの大きさを考えれば、トランクスペースは広大と言うしかない。
ボディの大きさを考えれば、トランクスペースは広大と言うしかない。

組立品質が問題だとされたが、その理由はクラス標準や価格に対してというよりも、ひとびとがこのクルマにメルセデス・ベンツのレベルを期待していたからだった。

だが、例えそうだとしても、メルセデス初のハッチバックはセールス面では成功している。

7年間で実に100万台以上のW168がオーナーのもとへと嫁いでいったのだ。

では、なぜ後継モデルが登場しなかったのだろう?

初代はあれほど革新的だったにもかかわらず、なぜ3代目でAクラスは一般的なハッチバックになってしまったのか?

その理由とは、「ハッチバック」という言葉そのものにある。

ハッチバックはつねにその名前どおりのモデルとして創り出されてきたが、いまや時代が求めるものが変わって来ているのだ。

その結果、例えば現行Aクラスはもはや北米市場で販売されていない。

完ぺきなハッチバック

現行Aクラスはメルセデスの前輪駆動モデル用モジュラープラットフォーム、MFA2をベースにしているが、このプラットフォームからは5ドアハッチバックと4ドアセダン、そしてBクラスの名を与えられてはいるものの、MPVまで登場している。

さらに、CLAと言う名の4ドアクーペと、CLAシューティングブレークという5ドアモデルまで登場しており、クロスオーバーのGLAとコンパクトSUVのGLBもこのプラットフォームを共有している。

万一の事故の際にはエンジンがキャビン下へと潜り込む。
万一の事故の際にはエンジンがキャビン下へと潜り込む。

メルセデス以外に範囲を広げれば、インフィニティQ30とQX30もAクラスと同じプラットフォームをベースにしている。

こうした多様なモデルの前では、控え目なハッチバックにチャンスなど無いが、革新性はその中味にあるのだ。

皮肉にも、当時はもっとも多才な能力を備えた1台が、そのプラットフォームの多用途性の無さによって生き延びることに失敗したなどとは俄かには信じられない。

だが、我が家にとってこのR130 ONHのナンバーを付けたAクラスは、10年間に渡って完ぺきなハッチバックであり続けた。

子どもたちはこのクルマに乗って大きくなったのであり、A140では犬をビーチに連れて行ったり、ゴミを捨てに行ったりもした。

だが、10年ほど前、ついにこのクルマではスペースが足りなくなり、メルセデスへと売却している。

当時、メルセデスでは過去のモデルを集めた小さなコレクションを作ろうとしており、誰が見ても英国でもっとも古いA140であることが明らかな、我が家のAクラスに白羽の矢がたったのだ。

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