【眠れる巨人の目覚めはいつ?】マクラーレン復活への道のり チーム代表にインタビュー 後編

公開 : 2020.05.23 20:50

最善の選択 事態は複雑に

過去2シーズン、ルノー製PUの供給を受けていたマクラーレンだが、メルセデスのほうが素晴らしいユニットを創り出すことに疑いの余地はないだろう。

ワークス契約でないということは、マクラーレンが新たな現実を認識し、最善の道を選択したということを表している。

2020年シーズン開幕戦、オーストラリアGPは直前で中止が決定されている。
2020年シーズン開幕戦、オーストラリアGPは直前で中止が決定されている。

2021年シーズンからの契約が意味するのは、このPU変更がコスト削減と白熱したレース展開の実現を目指したF1の大幅なルール変更とともに行われるということであり、マクラーレンではこれが公正なレース環境を生み出すとともに、自らの前進をも助けてくれると信じていた。

つまり、マクラーレンの計画とは、今シーズンは成長を確たるものとし、来シーズンからの飛躍を目指すというシンプルなものだったのだ。

だが、いまや事態はそれほど単純ではない。

シーズンの開幕は延期され、成功を積み上げる代わりに、近い将来に対する懸念が突然沸き起こっている。

レースが行われないということはチームにスポンサー料や放映権料が入らないということであり、さらには、新型コロナウイルスの感染拡大が収束したとしても、存続できないチームがあるのではないかとさえ言われているのだ。

F1全体が閉鎖されたような状況のなか、マクラーレンでも多くのスタッフを自宅待機にしている。

楽観主義は健在 歩みは着実

この状況は単にマクラーレンのチーム再建を一時停止させているだけではない。

コストを削減すべく、2021年シーズンは今シーズン用のマシンを継続使用することに各チームが合意したことで、新たなF1ルールの導入は2022年シーズンへと先送りされることになったのだ。

8年間の停滞からマクラーレンはトップへと返り咲こうとしている。
8年間の停滞からマクラーレンはトップへと返り咲こうとしている。

それでも、マクラーレンは2021年シーズンからメルセデス製PUを採用する予定であり、この新ユニットを車体に搭載するための「絶対的に必要な」変更だけは許されるだろう。

「2021年シーズンからの新レギュレーション導入を求めていたのは公然の事実です」と、ザイデルは話す。

「しかし、この危機を直視して導入の延期を受け入れました。誰も今シーズンのレースが行われるどうかや、実際の財政状況もわからないのですから、当然と言えるでしょう」

「タイミングに関して言えば、新ルール導入時期の変更と長期に渡る休止期間が、われわれのいわゆる復活プログラムに多少の遅れをもたらすことにはなるでしょう」

ザイデルにはフラストレーションが溜まっていると思うだろうが、彼の楽観主義は健在だ。

それは昨シーズンの成長と、マクラーレンがふたたびトップに返り咲くことが出来るという信念がもたらしたものに違いない。

計画よりも多少時間は掛かるかも知れないが、彼らは着実に復活の道を歩んでいる。

番外編2:マクラーレンのアメリカン・ドリーム

マクラーレンが今シーズン戦うのは、(まだ始まっていない)フォーミュラ1だけではない。

近年、2度のF1チャンピオンであるフェルナンド・アロンソのインディ500挑戦を2回サポートしており、今年はインディカー・シリーズにフル参戦することにしたのだ。

マクラーレンSPではワンメイクのダラーラ製シャシーにシボレーのV6を組み合わせる。
マクラーレンSPではワンメイクのダラーラ製シャシーにシボレーのV6を組み合わせる。

シュミット・ピーターソン・モータースポーツと提携してアロウ・マクラーレンSPとして参戦するチームは、F1と同じパパイヤ・オレンジカラーのマシンを走らせる予定となっている。

チームは20歳のメキシコ人、パトリシオ・オワードと、23歳の米国人、オリバー・アスキューという有望な若手ドライバーを起用するとともに、新型コロナウイルス感染拡大の影響から今年は5月から8月後半に開催時期が変更されたインディ500では、さらにアロンソが加わることになる。

この計画によって、昨年スポット参戦で予選落ちを喫したアロンソとマクラーレンには、汚名返上のチャンスがもたらされるだろう。

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