【最大の違いが】なぜレクサスGSは、メルセデス・ベンツEクラスに負けて撤退するのか?

公開 : 2020.06.01 05:50  更新 : 2021.10.22 10:15

レクサスGSは2020年8月に生産を終了します。ドイツのメルセデス・ベンツEクラスやアウディA6、BMW 3シリーズなど、近いサイズのセダンに勝てなかった理由と、今後の戦い方を渡辺陽一郎が考えます。

ES人気の影響も GSは廃止される

text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)

レクサスの販売店によると「GSは2020年6月に受注を終了して、8月頃には生産も終える」という。

GSの終了は、販売店では2018年にESの国内販売を開始した時から話題になっていた。話の発端は現行LSのサイズアップだ。

レクサスGS
レクサスGS    レクサス

2017年に発売されたLSは、全長が5235mm、全幅も1900mmと大柄でメルセデス・ベンツSクラスを上まわる。

先代LSのユーザーから「新型に乗り替えたら車庫に入らない」という不満も聞かれ、現行LSは売れ行きが伸び悩む。

発売の翌年となる2018年は、本来なら好調に売れる時期だが、同年後半の登録台数は1か月当たり400〜500台と少なかった。

LSの不調もあり、以前は国内で売っていなかったESを2018年に導入した。カムリと共通のプラットフォームを使う前輪駆動のLサイズセダンで、後輪駆動のLS/GS/ISに比べると空間効率が高い。

そのためにESは、全長が4975mm、全幅は1865mmというGSと同等のサイズながら、車内の広さはLS並みだ。後席を重視する法人ユーザーにも対応して人気を高めた。

2019年のESの登録台数は、1か月平均で900〜1000台だからレクサスのセダンでは最多販売車種になり、LS/GS/ISは顧客を奪われた。

海外市場もGSの売れ行きが低迷

2019年におけるレクサスセダンの国内登録台数は、ESが1か月平均で900〜1000台、LSは300台弱、GSは100台弱、ISは170台前後になる。

レクサスのセダンで堅調に売れる車種はESのみで、それ以外は低調だ。

レクサスES
レクサスES    レクサス

今のレクサスの主力はSUVで、1か月平均の国内登録台数は、コンパクトなUXが1200〜1300台、ミドルサイズのNXは1100〜1200台、上級のRXは800台前後。

つまりESは、SUVのUXやNXに次ぐレクサスの大量販売車種になる。

ややサイズの大きなボディに快適な居住空間を備え、全車に直列4気筒2.5Lハイブリッドを搭載する。十分な動力性能を発揮して、WLTCモード燃費は20.6km/L(JC08モード燃費は23.4km/L)と環境性能も良好だ。

そこでほかのセダンの需要を吸収した。

2019年のレクサスの販売台数を世界的に見ると、北米が32万5000台で最も多く、中国は20万2000台、日本は6万2000台だ。最も多い北米では、ESも5万台を超えたが、LSはこの10%程度でGSはさらに少ない。

レクサスセダンの販売は、北米でもESに偏っている。

このような状況だからGSは海外でも廃止される。今後のレクサスセダンは、主力が前輪駆動のESで、後輪駆動は最上級のLS、コンパクトでスポーティなISと個性化を図りラインナップを再構築する。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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