【アフリカを縦断したランチア・ベータ】酒場の与太話が生んだ大冒険 前編

2020.06.27

サマリー

フェリックス・フルタクの愛車は、1975年式のランチア・ベータ。大胆に屋根を切り落とされた、もとクーペは、アフリカ縦断の大冒険を成し遂げました。1万5000kmに及ぶ自動車旅行を、本人とともに振り返ります。

もくじ

アフリカ縦断を敢行したランチア・ベータ
学費のために売却された赤いクーペ
多くの修理で自ずとクルマに詳しくなった
酒場で酔った勢いで口にした砂漠の縦断

アフリカ縦断を敢行したランチア・ベータ

text:Graeme Hurst(グライム・ハースト)
photo:Felix Furtak(フェリックス・フルタク)/Graeme Hurst(グライム・ハースト)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
大地に明確に道と呼べるものはない。数え切れないほどのトラックが、われわれが目指す方向へ走っていく。「数km毎に、目印として大きなドラム缶が置いてあります。もしそのドラム缶を見失ったら、死を意味しました」

ドイツに生まれ、南アフリカ共和国のケープタウンで暮らすフェリックス・フルタクが振り返る、恐怖と隣り合わせの旅の記憶。今から30年前、彼はアフリカを縦断する冒険へ出発した。サハラ砂漠を越えて。

1975年式ランチア・ベータでのアフリカ縦断の様子
1975年式ランチア・ベータでのアフリカ縦断の様子

GPSや携帯電話が誕生する前の、壮大なチャレンジ。もともとは、地元の酒場で盛り上がった流れで口にした、無謀な強がりだった。

アフリカを縦断するといっても、選ぶクルマでリスクは大きく変化する。トヨタを選べばきっと小さい。だが、フェリックスが選んだのは、ランチア・ベータ。信頼性に関しては、悪い方で評判が高い。

陰りゆくイタリアン・ブランドが生み出した、欧州の道でも心配に事欠かない、サビだらけのクルマ。27歳のフェリックスは、赤いベータでサハラ砂漠の走破に成功した。

チャレンジをスタートする以前から、ベータの走行距離は16万kmを超えていた。その事実が一層、無鉄砲な選択に思わせる。エンジンはすでに活発とはいえず、交換しても良い状態だった。

その前にランチア・ベータは、アルプス山脈も超えた。積んでいたトレラーから転がり落ち、屋根が切り取られてもいた。そんな思い出は、1975年式ランチア・ベータとフェリックスとの深い友情の一部に過ぎない。

 
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