【勝負のわかれ目】ホンダCR-Vとトヨタ・ハリアー 大差のワケ 売れるSUVの条件は?

公開 : 2020.07.02 05:50  更新 : 2021.10.22 10:15

CR-V内装、ヴェゼルと比べると

共通点の多い2車種なのに、なぜフルモデルチェンジ直前の先代ハリアーが月販平均1900台、CR-Vは450台と4倍以上の差が付いたのか。

最も大きな影響を与えたのは、外観と内装のデザインや質感だ。

ホンダCR-V(上)/トヨタ・ハリアー(下)
ホンダCR-V(上)/トヨタ・ハリアー(下)    ホンダ/トヨタ

まず外観はハリアーが先代型を含めて伸びやかに仕上げた。フロントマスクは鋭角的で、LEDや樹脂を巧みに使って工芸品のように緻密に造り込んだ。リアビューも含めて、質感が全般的に高い。

対するCR-Vはシンプルで、スポーティな雰囲気を強めた。

この違いはボディ寸法にも当てはまる。ハリアーはホイールベースの割に全長が長く、オーバーハング(前後輪からボディが前後に張り出した部分)も伸びている。

今は空間効率を高めて、カーブを曲がる時の慣性の影響も抑えるため、オーバーハングを短く抑える傾向が強い。

ハリアーはこの流れに逆行してオーバーハングを長く取り、ボディ側面の見え方を少し古典的なスマートさで仕上げた。

これに比べるとCR-Vは、今日的なショートオーバーハングだ。塊感が伴って外観も引き締まり、スポーティに見える。

空間効率も高く、全長はハリアーよりも135mm短いのに、1.5Lターボエンジン車には3列シートを備える7人乗りを用意した。

CR-V、3列シートが武器となる?

CR-VはSUVだから、床面を車内の後端まで平らに仕上げたミニバンのような造りにはなっていない。

3列目の床は燃料タンクのために高く、床と座面との間隔も不足して、大人が座ると膝が大きく持ち上がってしまう。

ホンダCR-Vのインテリア。
ホンダCR-Vのインテリア。    ホンダ

それでも国産SUVの3列目としては、マツダCX-8の次に快適だ。

片道45分程度なら、大人の多人数乗車も可能とする。そうなるとCR-Vの3列シート車は、ハリアーに差を付ける大切なセールスポイントだが、販売に結び付かなかった。

結局のところハリアーの外観は伸びやかで豪華な印象もあり、多くのユーザーが魅力を感じた。

CR-Vも引き締まり感とスポーティな雰囲気を併せ持ち、3列シート仕様も用意したが、販売面ではハリアーに勝てなかった。

内装も同様だ。

内装の質 ハリアー圧勝 価格を考慮

CR-Vはリアゲートの角度を立てたこともあり、荷物の積載に適している。実用性はCR-Vが上まわる。

その半面、内装の質はハリアーの圧勝だ。先代ハリアーと比較しても、CR-Vは見劣りした。

トヨタ・ハリアーのインテリア。
トヨタ・ハリアーのインテリア。    トヨタ

特に差が付いたのはインパネだ。ハリアーは先代型にも合成皮革が使われ、糸による本物のステッチ(縫い目)もあしらった。

対するCR-Vのステッチは、糸を使わない模造品だ。コンパクトSUVのホンダヴェゼルも、上級グレードには本物のステッチを使うので、CR-Vでは質感に不満が生じた。木目調パネルもボヤけた感じで冴えない。

今のCR-Vはハイブリッドの性能や乗り心地が優れ、車内も広く3列シートも用意するが、デザインがいまひとつだ。ヴェゼルの拡大版というか、ミドルサイズに見える。

対するハリアーは、ボディの大きさは同程度でも、CR-Vよりひとクラス上級のLサイズSUVに感じられる。

あくまでも見栄えの違いだが、400万円前後のクルマは趣味の対象で、嗜好品的な性格も強い。

質感や華やかさの違いは、購買意欲を左右して、販売格差に結び付いた。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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