【縮小する自動車産業】安くても売れない 奨励金で自動車メーカーは救えない

公開 : 2020.09.25 11:50

自動車産業は回復傾向にあるものの、将来的に縮小していくのは明らかです。一部の政府は奨励金制度によって購買意欲を高めようとしていますが、現時点では買い手とメーカーの両方が損をする可能性があります。

回復しつつ衰退する自動車産業

text:Jim Holder(ジム・ホルダー)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

世界経済が悪化する中、欧州の自動車産業は前進しており、7月の登録台数で前年比2.2%減にとどまり、デンマーク、フランス、オランダ、ノルウェー、スペイン、英国では前年比で増加している。

では、すべてが順調に進んでいるのだろうか? もちろん、そうではない。

電化モデルに対する支援策は手厚いが…
電化モデルに対する支援策は手厚いが…

たとえ公正な風が吹き続けたとしても、市場は年間を通じて24%減少すると予測されており、一部の自動車メーカーと多くの小売業者の将来が危ぶまれている。

ジャガーランドローバーの今夏の麻痺状態を無視することはできないし、フィアットルノー日産も大打撃を受けている。

今回の予想外の好転は、何もしないでいても貯蓄が枯渇していた3~6月の壊滅的な結果に比べ、多少の猶予を与えてくれるものだ。

しかし、フォルクスワーゲンのヘルベルト・ディースCEOは、世界中に点在する61の生産施設のほとんどを稼働することで、1時間あたり1000万ポンド(14億円)近くのコストがかかっていると推定。

また、平均的な英国の自動車ディーラーは、4月から6月にかけて12万5000ポンド(1754万円)の損失を被ったと推定している。英国には約4000の新車販売業者があり、それだけで5億ポンド(700億円)の損失に相当することになる。

奨励金制度の効果はある?

最も重要なことは、自動車メーカーや自動車販売業者に、在庫を現金に換えるチャンスを与えることだ。

新車に関しては、欧州市場が在庫レベルをリセットし、需給バランスを整えるには、9月末までポジティブなニュースが続く必要があると、ほとんどの関係者は考えている。

欧州に限った話ではなく、日本も例外ではない。
欧州に限った話ではなく、日本も例外ではない。

対照的に、中古車販売業者は在庫を求めて絶望的な状態にあり、リースの返却やオークションの売上が伸び悩む中、供給はロックダウンによって制限されている。

政府による奨励金(補助金)制度についてはどうだろう?

フランスとドイツでは、数か月前から気前の良い、EVに特化したプランが実施されている。例えば、プジョーe208を、月額99ユーロ(1万2000円)で48か月間に渡りリースで乗れるという大胆な支援策が施行されている。

これらの例は驚きの価格だが、7月のフランスの登録台数はわずか3.9%増、ドイツの登録台数は5.4%減であった。

一方、イタリアでは、8月1日から開始されると宣伝されていた。その結果、誰もが購入を延期したため、7月の数字が11%減少。英国では、イタリアと同様の理由から、奨励金の話が出るたびに二の足を踏んでいる購入希望者が多い。

しかし、奨励金制度は消費者のためにあるものではない。

今、在庫が余っているところでは、大きな割引がある。しかし、販売が進むにつれ、在庫はどんどん減っていく。消費者は近いうちに、自動車メーカーが消費者の貯蓄を倍増させるのではなく、単に利益を得るために奨励金制度を利用していることに気づくかもしれない。

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