ボルボXC60 T5 Rデザイン

2013.08.09

スポーティさが信条

ボルボの販売台数がこのところ好調に推移している。昨年は大幅に販売台数が伸び、久方ぶりに年間1万台の大台復活をはたした。そして、今年は更に上乗せをして、10月の時点で前年対比126.1%という好成績である。この伸長に大きな貢献をしたのが、Dセグメントの60シリーズである。なかでもSUVのXC60は、好調な売れ行きをしめしているという。そこで、編集部では、最新のボルボの人気の秘密を探るべく、XC60の長期テストをスタートすることにした。

ボルボ・ジャパンから、レポート車としてやってきたのは、XC60 T5 R-DESIGNという特別仕様車で、よりスポーティな走りを追求したモデルである。最近のボルボのデザインは、非常に洗練されてきていて、明確なボルボらしさを打ち出しつつ、スポーティでスタイリッシュな造形を実現している。このXC60もシンプルだが力強いサイドのラインと、絞り上げたウインドー・エリアがスポーツ・ライクな雰囲気を醸し出していて、実に好ましい。

このクルマの車両本体価格は569万円(消費税込み)で、オプションとしてボルボ得意のセーフティ・パッケージが装着されている。この価格は15万円だが、これで、現在、必要とされるほぼすべての安全機構が入っているので、お得である。ボルボと言えば、安全の元祖であり、今どき、突然派手に宣伝を行っているにわかメーカーとは、その取り組む姿勢が違うのだ。先ごろ発表された“ビジョン2020″では2020年までに新しいボルボ車での死者、重傷者ゼロの実現を目指す、としている。その心意気や如何に、というところだ。

具体的にパッケージの中身を紹介すると、アクティブクルーズコントロール、歩行者検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキシステム、車間警告機能、ドライバーアラートコントロール、レーンデパーチャーウォーニング、ロードサインインフォメーション、アティブハイビームで、これだけの装備が全部付いて15万円は安いと思う。私の場合、実際に乗ってみると、恥ずかしながら意外にレーンを外しそうになる度合いが多いのが判った。ということで、自分のドライビングのクセもよく判るのである。レポート車は、これにETC 25000円を付けて、合計で5,865,000円(消費税込み)となっている。

ボディサイズは、全長4625mm、全幅1980mm、全高1715mmで、SUVとしては、手頃で扱いやすいサイズと言えよう。エンジンはターボ付きのDOHC4気筒で、排気量は1998ccである。出力は240ps/5500rpm、32.6kgm/1800〜5000rpmで、低回転から最大トルクが得られる扱いやすいエンジンだ。サスペンションは、フロントがストラット、リアがマルチリンクだが、よりスポーティな走りをテーマとした、このR-DESIGNでは大幅な強化が図られている。フロントには、ストラットタワーバーを装着し、ブッシュ類、スタビライザー、スプリング、ダンパーを何れも締め上げ、更に20インチの大径ホィールと、255/45R20のタイヤを奢っている。この他、R-DESIGNでは、デュアル・スポーツテールパイプ、シルクメタル処理のフロントグリルやドアミラー、そして、インテリアでは、本革のスポーツシートやスポーツステアリングホィール、専用アルミニウムメーターパネル、などが標準として装着されるが、最も注目されるのは、その足さばきなのだろう。

さて、このXC60を受け取ったのは10月31日で、この原稿を書いている11日までの間に490kmを走ったのみである。しかし、この間、FUJIスピードウェイへの往復など高速道路の走行も経験したので、ほぼ日常の走り方の大半を経験したと思う。まず、一番の印象としては、確かに強化されたサスペンションは秀逸である。ロールは極めて少なく、それでいて、高速道路の段差なども大きなショックもなくこなし、着座位置が高いにも係らず、不安なく高速コーナーにも入って行ける。ゴツゴツ感は殆ど無いので、通常走っている限り、もっと大きなロールでヤワなコーナリングをするのかと思うが、意外にもしっかりと踏ん張るので、驚く。それだけ、しなやかなサスだと言えるのだ。これは、このクルマの一番の美点だろう。

逆に若干不満だったのはステアリングで、切り初めがいささか重い。昔なら、これでもOKだったのだろうが、今の速度感応型の軽いステアリングの操舵力の傾向からは、やや重すぎると思う。走り始めてしまえば気にならないのだが、あるいは20インチのタイヤの影響もあるかもしれない。確かに設計陣は、このサスペンションセッティングにはこの程度の重さが必要と判断しているのかもしれないが。

燃費は、カタログ上では9.79km/ℓ(JC08モード)となっているが、今回は1回の給油で67.0ℓを飲み込んだので7.31km/ℓとなった。特に燃費を意識して走った訳ではないが、今後はアクセルワークに注意してもう少し、良い数字にしたいと思っている。来月は更に走りこんだ印象を紹介したい。

(AUTOCAR No.116 2012年11月25日発売号掲載)

デザインの良さは昔から

今月は走行距離がかなり伸び、1000km以上を走ることが出来た。但し、その大半は都内だったので、残念ながら期待したほどの燃費の向上は無かった。具体的には、トータルで1381kmを走破し191.59ℓのハイオクを消費したので、燃費は7.21km/ℓとなり、前回とあまり変わらない。いずれにしても、私の場合、可能な限り、アクセルを踏み込んでゆくタイプなので、燃費はあまり指標として使って欲しくないパートではある。

先号で、ボルボのデザインが消費者に高く評価されていると書いたが、毎日乗って、じっくりと見てゆくと、一見シンプルに見えるボディラインが、3次元で巧妙に仕組まれた結果であることが判る。サイドミラーで、ボディ後半部のラインを見ると、単純なストレート面だと思っていたものが、実は緩やかに膨らんでいるのが見て取れ、これだけでも設計の妙が感じられるのだ。

もともと、ボルボのデザインは、スタイリッシュだったのだが、その代表的なものが、1960年代前半に誕生した、P1800というスポーツクーペだと思う。写真で判るように、当時としてはウエストラインを高くし、極端にグラスエリアを狭くした非常に特徴的なデザインで個性的だった。そして更にカッコ良かったのは最後期の頃にデビューした1800ESというワゴン版で、リヤの全面ガラスのハッチなど、本当に素晴らしかった。これらのボルボは、今でも、ごく偶に見かけ、また、ヒストリックカー・イベントなどでもお目にかかるが、先頃、私の家のすぐ近くに、殆どオリジナルのベストコンディションに近い1800Eが存在しているのが判った。そこで、今回、2台を並べて見ることにした。件の1800Eは、最後期の1971年式で、当時の輸入ディーラーであるヤナセから初代オーナーの手に渡っている。歴代のオーナーはガレージ保管はむろん、日常のメインテナンスにも気を使い極上のコンディションで維持してきた様子で、錆の類は一切無くメッキ部分も新車時の輝きを失っていない。走行距離は僅か3万9000kmあまりで、ボルボ伝統の6桁あるオドメーターからして、おそらく、実走行距離だと思われる。4代目の現オーナーM氏もこの個体の素晴らしさをよく理解されており、引き続き、良いコンディションのまま維持されてゆくのは間違いない。

さて、並べて見ると、現代のSUVのXC60と、1800Eのサイズの違いにいささか驚くが、今は、安全や居住性を考えると止むを得ないと思う。しかし、デザインのフィロソフィは共通しているのが見て取れ、逆に当時の1800Eが如何に斬新な美しいラインを持った車であったかが窺える。そして、現在のC30は、正にこの1800Eのワゴン版の1800ESのリヤのデザインをモチーフとしていて、現在、人気を博しているのも納得がゆくのである。

(AUTOCAR No.117 2012年12月26日発売号掲載)

想像以上

ボルボXC60 T5 Rデザインのレポートは、今月より担当を変更してお届けする。これまで編集長がポルシェ991と兼務していたが、ひびの入ったフロントウインドウも直り、911のレポートに専念するという事情もあり、担当を引き継ぐことになった。

これまでは6気筒モデルしか試乗経験のなかったXC60。4気筒エンジン仕様も初めてながら、そのRデザイン仕様に乗るのも初めて。どんな感じなのか。

ひと月足らず、距離にして730kmほど走ってみた第一印象をひと言で表すなら“想像以上”。240ps/32.6kgmを発揮する2ℓターボは、1800rpmから最大トルクを引き出す効果で、1800kg近い車重をまったく感じさせないといっていいほど低速から頼もしく加速する。まずこれに感心。最大トルクはフラットに5000rpmまで発するため、街中であろうが高速であろうが、その加速感にストレスはない。6気筒より軽い鼻先との相乗効果で、この手のモデルとしては充分軽快に走らせられる。FFという割り切りもこのモデルではプラスだと思う。

ご存知のとおりRefinement(洗練)を意味するRデザイン、XC60 T5でもスポーティなスパイスを効かせている。内外装のさりげないデコレーションも去ることながら、専用のスポーツサスペンションと20インチタイヤの組み合わせは、その最たるものとして挙げられる。このエクイップメントがもたらす走りは、先に触れた軽快感をさらに後押ししている印象。まだワインディングには連れ出せていないが、アグレッシブな走りも許容しそうだ。いや、あるいはワインディングでの走りも重視した仕立てなのかもしれない。街中では少し固めと感じる乗り心地やロールを抑え気味にした足のセッティングが、それを大いに想像させる。

ステアリングは少し重めの設定。適度なイナーシャ感とでもいおうか、高い剛性感を含めて個人的にはこのフィーリング、嫌いではない。ちなみにこのモデルには車速感応機構は付かない。同じ特別仕様車扱いとなるS60 & V60の T4 Rデザイン2モデルには装備され、3段階のステアリングレシオから選択できる。この辺りの事情をインポーターに問い合わせてみると、車重やクルマのキャラクターを考慮して、XC60 T5 Rデザインは車速感応式ではなく固定式となったそうだ。裏事情はともかく、車庫入れに難儀するわけではないし、むしろワインディングでのフィーリングが期待できそうだ。

毎日のように使ってみて、さしたる不満が起こらない点も報告しておきたい。ボディサイズは日本では大柄な部類に入るかもしれないが、慣れてしまえば気にならない。狭い駐車場での切り返しが多少面倒なときがあっても、むしろ充分な空間や質のいいシートによってゆったりと寛げるキャビンは、それを補って余りある快適性をもたらしてくれる。

快適性といえばエアコンもスマートだ。今どきは少なくなってきたが、体に悪そうな排気ガスを撒き散らしながら走る大型トラックやバスの後ろについたときに内気循環に設定。外気状況が復帰すると自動的に外気導入に変更してくれる機能は、当レポートで初めて知った。乗員への優しさ、ボルボらしい。

担当したばかりだが、この車両は来月で退役。それまでにワインディングに行けるといいのだが。

(AUTOCAR No.118 2013年1月26日発売号掲載)

最大の魅力は走り

期間にして半年足らず4500km余りの走行を経た当レポート車、XC60 T5 Rデザインは、今月をもって退役する運びとなった。

昨年12月末に編集長から引き継ぎ担当になってまだ2カ月ほどしか経っていないが、2600km余りのドライブで充分にこのクルマの魅力を味わうことができた。

最も印象的だったのはアシの仕立て。タウンスピードでの段差や首都高速の路面の継ぎ目を越えるときは、固めのセッティングがRデザイン仕様を感じさせるものの、路面の整った高速道路や峠道的な一般道では、思いのほか懐の深さを味わわせてくれる。コーナーの続く道をアグレッシブに走っても、タイヤは簡単に音を上げない。担当者レベルの腕では、タイヤを鳴らすことはほとんどなかったほどである。当然ロールは許すが、重心高めのSUVとしては比較的少ない方だし唐突感もない。従って高い安心感を持ってコーナリングをクリアできる。4気筒エンジンという鼻先の軽さも手伝って、担当者レベルの腕でもそれなりにスムーズで気持ちのいい走りが楽しめた。走りに少しでもこだわりを持って選ぶなら、一考の価値あるグレードと報告したい。もちろん内外装各部の専用仕上げもRデザインの大きな魅力。それだけで選ぶのも悪くない。

日常ユースで実感したのは、自分は意外と車線内をきちんと走れていないということ。とくに曲がりくねった道ではレーン・デパーチャー・ウォーニングの警告音が鳴る頻度は高かった。安全なドライブを促してくれるボルボの各種安全装備は、本当にたいしたものであると感心した次第。

一方、改善の手を今後も休めてほしくないのが燃費だ。別項のとおり実用燃費は決して褒められた数字とは言い難い。直噴エンジンやDCTを搭載していても、やはり1800kg近い車重やSUVというボディスタイルでは、簡単に好燃費を出させてはくれないようだ。ちなみに報告した実用燃費は、踏めるときはしっかり踏むという燃費をいっさい意識することなく走ったデータである。ただ、高速をのんびり走るとメーターの燃費表示で15km/ℓに届いた時もあったから、走り方次第では報告した実用燃費との乖離があるということを付け加えておきたい。

レポート車の実用燃費は、この手のモデルとしては悪いというほどでもないのだが、他ブランドに目を向けると様々な手法で燃費向上策を採り入れているのも事実。パッと思い付くところでは例えばディーゼルとか、アイドルストップ機構とか。造り手側もこの点は今後の改良項目リストに上げているだろうし、ぜひとも期待したいものである。

……という燃費を理由に、このモデルを選ばないほうがいいのかと問われれば否定したい。例え褒められる燃費ではなかったとしても、それを補って余りある魅力が溢れているからだ。そもそもXC60の人気は日本だけではなく、2011年に世界で最も売れたボルボ車がこのXC60であることは本誌110号“ボルボ大研究”にてご紹介済みだ。世界的にも人気のこのモデルをベースに、より手の届きやすくなった4気筒エンジン×FFシャシー、さらにRデザインで仕上げたT5 Rデザインの価値が低いはずがない。車庫事情などでボディサイズが許容できるなら間違いのない選択肢となるだろう。

(AUTOCAR No.119 2013年2月26日発売号掲載)

 
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