3種類のBMWを融合 110km/hでの高速道路も快適 ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ(2)

公開 : 2024.01.27 17:46

飛行機から自動車へ業種を広げたブリストル ブランドの未来を探った1台のドロップヘッド・クーペ 量産に至らなかったプロトタイプを英国編集部がご紹介

雰囲気は1930年代のグランドツアラー

ブリストル400のボディは、BMW 327へ強い影響を受けたスタイリングで、ウッドフレームにスチール製パネルを被せたもの。シャシーは、326と同じボックスセクション。エンジンは、328用の直列6気筒へ改良を加え、最高出力の向上が図られた。

価格は、ハードトップのサルーンを1000ポンド、ドロップヘッド・クーペを1250ポンドに設定。それぞれ500台の生産が、当初は計画された。

ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ・プロトタイプ(1947年/欧州仕様)
ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ・プロトタイプ(1947年/欧州仕様)

直列6気筒エンジンの1号機が完成したのは、1946年5月。その直後にシャシー番号400/1/001が振られた、最初のサルーン・プロトタイプが組み立てられ、一部の自動車雑誌などで紹介されている。

続いて、もう1台のサルーン、400/2/002が完成。ドロップヘッド・クーペのプロトタイプ、400/1/003と、今回の400/1/004も形になった。

ウッドフレームで組まれたソフトトップは、プロトタイプとは思えないほどソリッド。重厚感が漂い、大人2人で持ち上げた方が賢明なほど重いが、スムーズに動く。フロントガラスの上端へ、ピタリと前端が収まる。

固定は3か所のラッチで。閉じた状態で走れば、印象はガラリと違う。キャビンは日陰の落ち着いた空間になり、後方視界は小さなウインドウで殆ど得られない。頭上空間は大きく、風切り音や隙間風などは生じない。

排気音は僅かに小さくなるが、エンジン音は大きく聞こえる。雰囲気は、1930年代のグランドツアラー。柔らかく右足を傾けながら、早めにシフトアップし、太いトルクにあやかるのが良い。

調査でプロトタイプだと解明したマニア

クリーム色に塗装され、レッドのカンバスでコーディネートされた、400 ドロップヘッド・クーペのプロトタイプは、1947年3月のジュネーブ・モーターショーへ出展。400 サルーンとともに、沢山の注目を集めることに成功したようだ。

その1か月後、400 ドロップヘッドクーペは売りに出され、アラン・マーシャル氏が購入。彼はBMWの愛好家として知られ、フレイザー・ナッシュのハロルド・オールディントン氏と友人関係にあった。

ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ・プロトタイプ(1947年/欧州仕様)
ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ・プロトタイプ(1947年/欧州仕様)

想定価格は1500ポンドへ値上がりしており、マーシャルは手数料や税金などを含め1669ポンドを支払った。積極的に乗られ、1947年末までに走行距離は1万6000kmを突破。1948年には、自動車雑誌のモーター誌で紹介もされている。

マーシャルによる売却後、複数の所有者を経ながらリビルドを受け、走行距離は16万km以上に。ボディは1度ブルーへ塗装されるが、オリジナルのクリーム色へ戻された。

1972年に、ブリストル・マニアのアンドリュー・ブロウ氏が購入。彼はこのクルマが特別な1台ではないかと考え、ケンブリッジ大学とオックスフォード大学、ブリストル・カーズを訪問し、細かな調査を進めた。

そして、ステアリングラックに開発段階だったことを示す痕跡を発見。プロトタイプだと解明した。だが、なぜか1976年に手放している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    エマ・ウッドコック

    Emma Woodcock

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ブリストル400 ドロップヘッド・クーペの前後関係

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