自動車安全テストが激減? メーカー「滑り込み」で高評価獲得 欧州、新要件導入前に

公開 : 2024.02.20 06:25

欧州で自動車安全テストを行うユーロNCAPは、昨年の評価数が73車種→18車種と大幅に減少したことについて「新要件の導入前にメーカーが急いだ」ことを理由に挙げている。

常に移動する「ゴールポスト」 高評価獲得を急ぐメーカー

欧州の自動車安全テスト機関であるユーロNCAPは、2022年に過去最多の73車種を評価したが、2023年の評価数はわずか18車種にとどまった。この大幅な減少については、新しいテスト要件の導入に間に合わせようとメーカーが急いだことも一因であるとされている。

欧州市場における新車の売れ行きだけでなく、保険料にも影響を与えると言われているユーロNCAPで最高評価の5つ星を獲得することは、多くのメーカーの間で開発目標の1つとなっている。

新型車の安全性評価には約40万ポンド(約7500万円)かかる。
新型車の安全性評価には約40万ポンド(約7500万円)かかる。    ユーロNCAP

「メーカー各社は当初の開発目標を達成するため、2023年に難易度の高いテスト要件が導入される前に、2022年中に評価を取得しようと躍起になっていた」とユーロNCAPの広報担当者は言う。

18車種うち17車種が新型車で、その評価は概ね高かった。うち14車種(82%)が5つ星、3車種(18%)が4つ星を獲得し、4つ星を下回った車種はなかった。

ユーロNCAPによると、メーカーは車種とプロトコルごとに目標の星評価を定めるため、新しいテスト要件によって製品サイクルと発売時期が決定されるという。メーカーには、これに間に合うように自動車を生産しなければならないというプレッシャーがかかるようだ。

ユーロNCAPはこのような理由から、2023年の評価数の減少には驚いていないと述べた。

「5つ星の獲得に求められる要件を把握するために、メーカーがさらなる時間を必要とすることは珍しくありません。わたし達は過去10年間、このような(評価数の)変動を見てきました」

しかし、2023年に評価数が減った理由は、テスト要件の変更だけではなかった。メーカー各社は、新型EV(電気自動車)の開発を進める一方で、既存の内燃エンジン車の寿命を延ばすという過渡期にある。その結果、特に近年、ユーロNCAPは多くの内燃エンジン車を評価してきた。この傾向は、新しいEVが登場するにつれて鈍化し始めている。

また、半導体不足を引き起こし、新車発売を遅らせたパンデミックの影響も大きい。

「2022年のテスト要件は、パンデミックの影響により当初の予定よりも1年長く、2020年1月から実施されています。多くのメーカーが半導体不足に悩まされたため、生産台数の減少や遅れが生じ、新車導入の延期を余儀なくされたのです」と広報担当者。

パンデミックはもはや遠い記憶となり、新しいテストが確立されたことで、ユーロNCAPは2024年には少なくとも40車種、2025年にはおそらくそれ以上を評価すると予測している。2026年には、さらなる新テスト要件を導入予定だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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