557psの「稲妻」で興奮は得られる? マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレへ試乗 魅力は少なくない

公開 : 2024.03.20 19:05

有能なシャシーを使い切れるサスペンション

乗り心地は、アダプティブ・エアサスペンションが標準装備され、充分しなやか。増えた車重を受け止めるため、グレカーレ・トロフェオより硬めに設定されているが、有能なシャシーを使い切れる設定といえ、好ましくないわけではない。

コーナーへ飛び込んでも、ボディロールは最小限。ステアリングは軽くクイックで、手のひらへ充分な量のフィードバックが伝わってくる。意欲的に操ろうという自信を鼓舞するように。

マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)
マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)

ただし、限界領域はさほど高くない。筆者の予想より早い段階で、グリップが追いつかなくなっていた。内燃エンジン版と比較して、滑沢さは減じているように思う。

気持ちを鎮めて市街地を走らせると、うねるような路面で引き締まった姿勢制御が光る。だが、細かな凹凸が連続するような区間では、減衰特性が影響し、頭が揺さぶられるような振動も伝わってきていた。

ドライブモードをいろいろ試した結果、パワートレインをGTモード、サスペンションをスポーツ・モードへ設定した状態が、筆者の好みだった。これなら、テスラモデルYより落ち着いた乗り心地を得られるようだ。

アルミホイールを1サイズ落とせば、さらに快適性は高まるだろう。試乗車は、21インチと大きかった。

主力の選択肢になることは難しい?

グレカーレ・フォルゴーレの英国価格は、10万9900ポンド(約2077万円)から。電動のマカン・ターボやモデルY パフォーマンスと比べると、お高めなことは間違いない。

装備は充実している。英国の場合、家庭用充電器の設置工事が価格へ含まれる。また、欧州全土にある96%の充電器に対応した、マセラティ・パブリック・チャージというスマートフォン・アプリも利用が可能になる。

マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)
マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)

イタリアンなデザインは美しく、インテリアも上質。実用性は高く、速さも不足ない。ただし、価格価値に優れるとはいいにくい。沢山の魅力を備えることは確かだが、フォルゴーレでも、グレカーレが主力の選択肢に躍り出ることは難しいかもしれない。

執筆:ダン・ジョーンズ

◯:鋭い直線加速 マナーの良い操縦性 ステアリングのフィードバック ゆとりある車内空間
△:高めの価格 減衰力が不足気味のサスペンション

マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)のスペック

英国価格:10万9900ポンド(約2077万円)
全長:4847mm
全幅:1979mm
全高:1667mm
最高速度:220km/h
0-100km/h加速:4.1秒
航続距離:500km
電費:4.1km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2480kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
バッテリー:97.0kWh(実容量)
急速充電能力:150kW
最高出力:557ps
最大トルク:83.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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