プジョー208GTi 30thアニバーサリー

公開 : 2014.12.05 23:40  更新 : 2017.05.29 19:00

■どんなクルマ?

1980年代のアイコン的存在ともいえるプジョー205 GTiが英国の道に上陸してから、じつに30年が経った。たしかに当時の市場のクルマのなかで最速だったわけではないけれど、そのアジリティや素晴らしいハンドリング、サイズ感や元気いっぱいの1.6ℓと1.9ℓエンジンが名声を得るに、さほどの時間はかからなかった。

直後にその他のメーカーが躍起になってライバル・モデルの開発に着手したものの、残念ながら205 GTiと肩を並べる結果には至らなかった。唯一ホットハッチの先駆者であるゴルフGTiが奮闘したともいえるけれど、その値段とボディ・サイズゆえに、フランス流 ’joie de vivre(=生きる歓び)’ には敵わなかった。

そんな205 GTiの生誕30周年を讃えるかたちで、プジョー208 GTiの限定モデルが発表された。標準の208 GTiがデビューした時点で、あまりパッとしなかった206や207 GTiへの罪滅ぼしは終わっているのだが、このアニバーサリー・エディションはさらに楽しさが増しているのだという。

画像の赤×黒のボディ・カラーはフォード・フィエスタなどの限定車でここ最近何度か目にしている向きも多いかもしれないが、黒のフェンダー・アーチ・モールと外装パーツを取り付けた、赤のみ、白のみのモデルも用意されることになっている。

■どんな感じ?

アニバーサリーGTiたらしめるコンポーネントは、より速く、そして幸運なことに、より楽しくすることに的が絞られている。車高は標準のGTiよりも10mm下げられており、サスペンションの仕立てもよりサーキット・フレンドリーになっている。18インチのアロイ・ホイールにはミシュラン・パイロット・スポーツが組み合わされ、エンジンはユーロ6に適応しながらも、8psと2.5kg-mのパワーアップに成功している。

内装の目玉となるのはプジョー・スポーツ・バケットシート。サポート性がたかく、常にドライバーを適切な位置にホールドしてくれる。

足元をみれば、ブレンボ製のブレーキを標準採用していることがわかる。ダンパーの仕立ても見直され、それに伴いスプリング・レートはフロントが30%、リアが80%高められている。フロントのスタビライザーはわずかに柔らかいものに変更される一方、リアは硬められているのはアンダーステアの低減を目論んでいるからだ。

トラクションの向上のためにトルセン・メカニカルLEDが組み込まれ、スタビリティ・コントロールは通常のものよりもスリップを許容する方向に振っている。言うまでもなくハンドリングにおける楽しさの向上のためだ。

標準の208 GTiの完成度が高かったことは承知しているが、30thアニバーサリーの方がさらに速く、高速域の安定感が高いことがフランスのサーキットを走らせて体感できた。

締め上げられたサスペンションのおかげで安定性が高く、ボディ・ロールも最低限に抑えられている。トルセン・デフのおかげで、コーナリング時に内輪がスピンしないことも、非常にありがたいと感じる。

アンダーステアも軽減されており、時にテールは穏やかに滑り始めさえするが、ESPのおかげで(解除しないかぎり)破綻することはない。非常にナチュラルな安定感に浸れるはずだ。小径でクイックなステアリングの影響もあり、ぶかぶかとした印象が皆無なのもいい。

残念ながらドライの状況を試す機会には恵まれなかったけれど、ウエット路面でこれほどの完成度なのだから、どのような天候下でも速く、エンターテイメント性に優れていると断言できる。

6.5秒という0-100km/hタイムも性能の高さを示しているといっていい。あと£650(12万円)を支払えば、もう少し速いフォード・フィエスタSTマウンチューン・パフォーマンス・パックを買えるけれど、こちらには大径ブレーキや魅力的なデフはついてこない。

また一般道を走っても、サスペンションの締め上げによる乗り心地の悪さを感じることもなかった。もちろん柔らかいというと嘘になるが、路面の継ぎ目のせいで不快な振動を生じたりするようなことはなく、一貫して安定感を損なうことはなかった。

高低差がある路面ではトルク・ステアを感知することもあるものの、サーキットでは問題になることはなささそう。また標準の208 GTiと同じく、変速ストロークの大きさは、このクルマのキャラクターにミスマッチな感じがしなくもないが、正確性に問題はなく扱いやすい類であることは間違いない。ブレーキの制動力や、シートのサポート性にもとても満足できた。

■「買い」か?

もちろん。きっと気に入るにちがいない。ホットハッチに必要な要素はきちんと用意されているし、実用性も高い。

しかし購入を決めたならば、急いでディーラーに向かう必要がある。限定800台のうち100台しか英国に入ってこないうえに、すでに各ディーラーへの割り振りがはじまっているからだ。

標準の208 GTiよりも£2,000(38万円)値上げされているということはつまり、ヴォグゾール・コルサVXRニュルブルクリンクと近接する価格であることを意味すると同時に、フォードやルノーの擁するライバルよりも大差をつけて高価だということになる。

しかし筆者は、価格相応の魅力があると思うどころか、この価格でこの完成度はいささか安すぎるとも感じるのである。

そう思うのはなにも動力性能だけではなく、基準車の139g/kmから125g/kmへと減ったCO2排出量も影響しているのかもしれない。

しばしの空白期間のあと、プジョーはルノー・クリオRSを物ともしないモデルを生み出すことに成功した。プジョーの航海は再出発したばかりだが、天気晴朗、取舵よし、と言っていい。

(スティーブ・クロプリー)

プジョー208GTi 30thアニバーサリー

価格 £21,995(412万円)
最高速度 230km/h
0-100km/h加速 6.5秒
燃費 18.5km/ℓ
CO2排出量 125g/km
乾燥重量 1185kg
エンジン 直列4気筒1598ccターボ
最高出力 208ps/4400rpm
最大トルク 30.6kg-m/1500rpm
ギアボックス 6速オートマティック

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