後の7シリーズへ繋がった? ボルクヴァルトP100 BMW 502(2) 対象的な姿の大型サルーン

公開 : 2025.01.25 17:46

スポーティに運転するタイプではないBMW

一方のBMW 2600Lは、クラシカルな見た目ながら、フォルムのバランスは良い。荷室も曲線基調のシルエットの割には広く、給油口の処理が面白い。エンジンルームには、車載工具が用意されている。往年のBMWらしく、整備性はいかにも高そうだ。

フロントシートへ腰を下ろしドアを閉めると、重厚な音が鳴る。2600Lの印象を、簡潔に表すように。

BMW 2600L(502 V8/1954〜1963年/欧州仕様)
BMW 2600L(502 V8/1954〜1963年/欧州仕様)

スピードメーターは扇形で、ダッシュボードとスイッチ類はクリーム色。戦前のBMW 326譲りの部品だと考えて良いだろう。フカッとしたシートはクロス張りで、P100より運転姿勢は起き気味。視界は広い。

このBMWは、スポーティに運転するタイプではない。低圧縮比のV8エンジンは静かに回転し、17.9kg-mの最大トルクは2500rpmで湧き出るため、扱いにくさはない。低めのトップギアでゆったり走るのが好印象。30km/hからでも、充分加速できる。

全長は4731mmと、こちらもボディは大きいものの、出だしは軽い。スムーズに加速し、ステアリングホイールの据わりも良い。クラッチとブレーキのペダルに過大な力は必要ないが、複雑な機構を介したコラムシフトのレバーは、ゆっくり動かす必要がある。

乗り心地はソフトでありつつ、落ち着いている。減速時には、フロントノーズが予想以上に下を向く。ステアリングの反応は高負荷時にも良好で、カーブが連続する郊外の道でも流暢に駆け抜けられるはず。

7シリーズへ結びついた可能性を抱かせるP100

同時期に提供されていた、対象的な見た目の大型サルーン。創業者のカール・ボルクヴァルト氏は、戦前の成功にとらわれることなく、新しいドイツの高級車というアイデアへ新鮮な考えで取り組んだ。

当時のBMWの大型サルーンは、1950年代の流れから抜け出せないでいた。他方のボルクヴァルトは、1960年代を見据えた仕上がりにあった。

手前からボルクヴァルトP100と、BMW 2600L
手前からボルクヴァルトP100と、BMW 2600L

ボルクヴァルト・イザベラは、BMW ノイエクラッセ、2002のテンプレートに繋がった可能性を想起させる。このP100を振り返ると、7シリーズの原点となる、1968年のE3型2500へ結びついた可能性を想像せずにいられない。

ボルクヴァルトとBMW 2台のスペック

ボルクヴァルトP100(1959〜1961年/欧州仕様)

英国価格:2395ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約488万円/現在)以下
生産数:2530台
全長:4712mm
全幅:1727mm
全高:1435mm
最高速度:160km/h
0-97km/h加速:14.6秒
燃費:5.7-9.2km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1298kg
パワートレイン:直列6気筒2240cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:101ps/5100rpm
最大トルク:16.0kg-m/2000rpm
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)

BMW 2600L(502 V8/1954〜1963年/欧州仕様)

英国価格:2458ポンド(新車時)/3万ポンド(約585万円/現在)以下
生産数:5914台
全長:4731mm
全幅:1778mm
全高:1524mm
最高速度:162km/h
0-97km/h加速:16.8秒
燃費:5.7-10.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1372kg
パワートレイン:V型8気筒2580cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:101ps/4800rpm
最大トルク:17.9kg-m/2500rpm
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)

ボルクヴァルトP100(1959〜1961年/欧州仕様)
ボルクヴァルトP100(1959〜1961年/欧州仕様)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ボルクヴァルトP100 BMW 502の前後関係

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