ミニ・クーパー SE:公園で駆け回る子犬 完成度は最高水準:クプラ・ボーン VZ ベスト・ファンEV(2)

公開 : 2025.03.13 19:05

技術進化とともに、バッテリーEVの運転体験も楽しさ上昇中 現実的な価格帯で探せる2025年のベスト・ファンEVは? アルファからミニ、アルピーヌまで 英編集部がベスト5を選出

3位:ミニ・クーパー SE 公園で駆け回る子犬のよう

今回の5位と4位を知ると、3位は恥じる結果ではない。ミニ・クーパー SEは、小柄なボディと重心の低さで優れた操縦性を叶え、218psと不足ない馬力を発揮する。試乗車はジョン・クーパー・ワークス(JCW)のボディキットをまとい、容姿も凛々しい。

車重は1680kgとミニではないが、5台の中では3番目に軽い。ステアリングはシャープでレスポンシブ。手応えも充分にあり、コーナーへ思い切り飛び込んでいける。グリップ力も高く、シャシーへ信頼感を抱け、より攻めてみたくなる。

アルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカ・ヴェローチェと、ミニ・クーパー SE スポーツ
アルファ・ロメオジュニア・エレットリカ・ヴェローチェと、ミニ・クーパー SE スポーツ    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ボディロールは最小限。つづら折りの道でも、怯える必要はない。積極的に乗りたいと思わせる、電動のハッチバックだ。

ドライブモードは複数用意されているが、選ぶべきはコアとゴーカート。アクセルとステアリングのマッピングに加えて、スタビリティ・コントロールの制御が変化する。

ゴーカート・モードはステアリングホイールが重くなり、意欲的なコーナリングを楽しめる。一方のコア・モードはデフォルトだが、より直感的。久しぶりの公園に喜び駆け回る子犬のような、活発な雰囲気が好ましい。

0-100km/h加速は6.7秒で、アルピーヌA290には0.3秒遅れる。アルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカ・ヴェローチェとの比では、0.7秒。それでも、比較的軽い車重が功を奏し、数字以上に速く感じられる。

完璧ではない乗り心地 実用性はほどほど

ただし、フル加速を求めるとフロントタイヤがスリップ。トラクション・コントロールが、それを抑え込む。高速域でのパワーオン時はトルクステアが生じ、僅かに操舵感が安定しない。特に登り坂では。

どのモードを選んでも、乗り心地は完璧とはいいにくい。鋪装したてのアスファルトでない限り、細かな揺れが収まらないようだった。減衰特性にも、改善の余地はあるだろう。A290の方が、動力性能と操縦性とのバランスを上手く引き出している。

ミニ・クーパー SE スポーツ(英国仕様)
ミニ・クーパー SE スポーツ(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

反面、クーパー SEは安定性の高さが魅力。ブレーキペダルのタッチも、A290ほど漸進的ではないものの、悪くない。回生ブレーキを最強に設定すれば、アクセルペダルだけで意のままに速度管理できる。

航続距離は、普段使いに困らない長さがある。現実的に300km以上は走れるだろう。

総合評価の足を少し引っ張ったのは、主に実用性だった。急速充電は最高95kWで、今回の5台の中では最も遅い。荷室も広いとはいえず、定員は5名ではなく4名だ。

しかし、これらの制限へ目をつぶれるなら、ミニの魅力へ強く惹かれる可能性は高い。個性の濃さはトップクラス。機敏な操縦性も強みといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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