アルピーヌA290:現実的なEVの最適解 ベスト・ファンEV(3) 「A」の期待を裏切らない

公開 : 2025.03.14 19:05

シンプル&コンパクト アルピーヌの期待へ応える

ただし、1980年代や1990年代に生まれた、フレンチ・ホットハッチの金字塔へ届く面白さまでは得ていない。グリップ力が高すぎ、落ち着きが強すぎる。アクセルペダルを戻してイン側へ食い込ませる、リフトオフ・オーバーステアなどは引き出しにくい。

それでも、パワーオン時のエネルギッシュさは至って爽快。パワートレインの反応は、シャープでダイレクト。回生ブレーキの強さを最強にすれば、一層の興奮を味わえる。一緒に過ごす時間が長くなるほど、魅力が顕になっていく。

ブルーのアルピーヌA290 GTSと、オレンジのMG 4 EV エクステンデッドレンジ
ブルーのアルピーヌA290 GTSと、オレンジのMG 4 EV エクステンデッドレンジ    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ステアリングホイールには、オーバーブースト・ボタンが備わるが、それなしでも不満なく速い。キックダウン・ポイントよりさらに右足を傾けるだけで、豊かなパワーを即座に召喚できる。

回生ブレーキは、ステアリングホイール裏へパドルを追加し、調整できた方が望ましかった。パワーデリバリーの特性も、ヒョンデ・アイオニック 5Nのように変化できれば、奥深さが増したように思う。

とはいえA290 GTSは、シンプルさとコンパクトさでそれを補う。軽量なボディと、洗練され走りに意欲的な特徴付けが、明らかな強みを構成している。アルピーヌへ抱く期待を裏切らない、2025年のベスト・ファンEVへ仕上がっている。

ベスト・ファンEV 2025年の5台が得た得点

アルピーヌA290 GTS:158点
クプラボーン VZ:153点
ミニ・クーパー SE スポーツ:151点
アルファ・ロメオジュニア・エレットリカ・ヴェローチェ:120点
MG4 EV エクステンデッドレンジ:119点

アルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカ・ヴェローチェと、ミニ・クーパー SE スポーツ
アルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカ・ヴェローチェと、ミニ・クーパー SE スポーツ    マックス・エドレストン(Max Edleston)

アルピーヌA290 GTS(欧州仕様)のスペック

英国価格:3万7500ポンド(約731万円)
全長:3990mm
全幅:1820mm
全高:1520mm
最高速度:168km/h
0-100km/h加速:6.4秒
航続距離:360km
電費:5.9km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1479kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:52.0kWh
急速充電能力:100kW
最高出力:218ps
最大トルク:30.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

この続きは、ベスト・ファンEV(4)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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