EQCを間もなく置換 メルセデス・ベンツGLC EV 新技術満載の試作車へ試乗  発表は9月

公開 : 2025.03.15 19:05

EQCの後継、GLC EVが完成間近 MB.EAプラットフォームに電圧800Vアーキテクチャ ブレーキにも新技術 滑らかで意欲的な加速 車重や全高を感じさせない機敏さ 英編集部が試作車へ試乗

EQCを置き換える、新しいGLC EV

メルセデス・ベンツのバッテリーEVが、大きく1歩前進する。現行のEQCを置き換える、GLC EVが約半年後に控えている。これによって、エンジン版のGLCと理想的なペアが完成するだろう。

メルセデス・ベンツを率いるオラ・ケレニウス氏は、バッテリーEVの販売を勢いづけるべく、EQを冠するモデル名でラインナップを展開してきた。しかし今後は、エンジン版との差別化を小さくし、両輪のような体制で市場へ訴求することになる。

メルセデス・ベンツGLC EV(プロトタイプ)
メルセデス・ベンツGLC EV(プロトタイプ)

つまり、ガソリンとディーゼル、プラグイン・ハイブリッドで構成される現行のGLCの仲間として、電動のGLC EVが加わる、と考えて良い。正式なお披露目は、2025年9月のドイツ・ミュンヘン・モーターショー。会場では花形の1台になるはずだ。

GLC EVが基礎骨格とするのは、新開発のMB.EAプラットフォーム。これはバッテリーEV専用の設計で、2026年に登場予定のCクラスと、Gクラスジュニアと呼べるSUVも採用する。コストの削減や、生産の合理化も実現する見込みだ。

さらにGLC EVは、2023年のコンセプトカー、ビジョンEQXXで予告されていた電動パワートレインを実装。eATS 2.0で稼働する、初の量産車でもある。

最も強力なツインモーターの四輪駆動仕様では、490psを発揮。シングルモーターの後輪駆動版では、271psになるという。駆動用バッテリーは、94.5kWhのニッケル・マンガン・コバルト(NMC)。航続距離は650km以上がうたわれる。

電圧800Vのアーキテクチャ ブレーキにも新技術

電動アーキテクチャは、電圧800Vで稼働。急速充電は、最大320kWへ対応する。理想的な条件なら、10分ケーブルをつなぐだけで、260km走れる電気を蓄えられる計算になる。高効率なヒートポンプ式エアコンも、標準装備になる。

同社がワンボックスと呼ぶ、回生ブレーキシステムも新しい。ブレーキペダルは完全なバイワイヤ制御で、制御ユニットが必要な制動力に合わせて、摩擦ブレーキと回生ブレーキのバランスを調整するとのこと。

メルセデス・ベンツGLC EV(プロトタイプ)
メルセデス・ベンツGLC EV(プロトタイプ)

GLC EVの開発で車両エンジニアリングの責任者を担う、ドミニク・ヴォークト氏は、「ゲームチェンジャー」だと、この技術を説明する。

2015年の登場以来、中型SUVのGLCは同社のベストセラーになってきた。それを次のフェイズへ引き上げる、新しいGLC EVも完成は間近。スウェーデン北部、北極圏に位置するガルティスプーダ峠で、プロトタイプへ試乗する機会をAUTOCARは得られた。

山肌にカーブが連続する道が伸び、ヘアピンや急勾配の区間も多い。路面は基本的に圧雪だが、部分的に凍結もしていた。シャシーには、かなり厳しい条件といえる。

写真をご覧のとおり、ボディは全面ラッピングで偽装。インテリアも、分厚いクロスで覆われていた。ガラスルーフ越しの陽光が、筆者を柔らかく照らす。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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