遂に電動のスズキ登場 eビターラ(エスクード)へUK試乗 トヨタ・アーバンクルーザーの兄弟 競合より活発

公開 : 2025.04.17 19:05

ライバルより活発な走り トヨタらしさが滲む

今回試乗したのは、最終形へ近い試作車だった。英国での納車は、2025年9月から始まるという。ナンバー登録はまだできず、英国のミルブルック自動車試験場での走行となった。多様なコースや路面が整備され、自動車開発には適した施設といえる。

eビターラはスズキが開発を主導したそうだが、後にトヨタ・アーバンクルーザーとしても売られる予定。実際に運転してみると、トヨタらしい素直さが滲む。

スズキeビターラ 61kWh ウルトラ(英国仕様)
スズキeビターラ 61kWh ウルトラ(英国仕様)

61kWhに174psのeビターラは、ジープアベンジャープジョーe-2008より走りが活発。回生ブレーキの効きは数段階から選択できるが、どのモードでもアクセルペダルの反応は予想しやすかった。

センターコンソール上には、ワンペダルドライブ・ボタンがある。しかし完全に停まるには、ブレーキペダルを踏む必要があった。ブレーキはバイワイヤ制御だが、踏み心地にはコシがあり、効きも安定していた。

ツインモーターの四輪駆動も試乗したが、トルクが11.5kg-mも増えるため、一層活発。0-100km/h加速は、7.4秒でこなすという。とはいえ、シングルモーターの前輪駆動でも、小さなクロスオーバーとして性能に不満はないはず。

線形的で直感的な反応 衝撃の吸収性は良好

操縦系の反応は、すべて線形的で直感的。トヨタ車のように、意識せず自然に運転しやすい。驚きや喜びは薄いかもしれないが、普段使いされる電動クロスオーバーとして、理に適った味わいといえる。

サスペンションは柔らかめの設定で、衝撃吸収性は概ね良好。大小様々な凹凸を、巧みに吸収していた。時折減衰不足を感じる場面はあったが。グリップ力も充分。旋回時の反応も優れていた。

スズキeビターラ 61kWh ウルトラ(英国仕様)
スズキeビターラ 61kWh ウルトラ(英国仕様)

四輪駆動版では、ステアリングホイールが僅かに重くなる。交差点からの急発進時には、トラクションコントロールの介入が小さくなる。乾燥路での差は小さいが、滑りやすい路面を頻繁に走る地域では、役立つはず。

他の交通がない自動車試験場では、運転支援システムを充分には確かめられなかったが、基本的にはフル装備。車線維持支援にも対応するアダプティブ・クルーズコントロール、ブラインドスポットモニターなどが、エントリーグレードから備わる。

ドライバーを監視するカメラも、ステアリングコラム部分に突き出ている。その判断は、過敏ではないようだ。

保証は最長10年 価格次第で魅力的な選択肢に

実際の航続距離などは、量産仕様が登場してから改めて確かめたいところ。電費は6.6km/kWhが主張される。今回の試乗では、4.8km/kWhを超える数字がダッシュボードに表示されることはなかった。

英国価格は、3万3000ポンド(約644万円)からが見込まれる。エネルギー効率に優れる、ヒートポンプ式エアコンは標準装備だという。急速充電は最大150kWまで。10-80%の回復には、45分が必要となる。

スズキeビターラ 61kWh ウルトラ(英国仕様)
スズキeビターラ 61kWh ウルトラ(英国仕様)

アフターサービスは充実している。保証は、ディーラーで整備を受けている限り、最長10年間まで延長可能。駆動用バッテリーも対象になるそうだ。

価格次第で魅力的な選択肢になるであろう、eビターラ。クラス最高水準ではないものの、全体的には無難な仕上がりにある。メガーヌ E-テック・エレクトリックなどを下回るお値段なら、オススメできるモデルになりそうだ。

◯:直感的に運転できる 乗り心地が快適
△:荷室が狭め タッチモニターの反応が遅い

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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