アスファルトへ吸い付く低さ EJS-クライマックス(2) 1950年代のロータスへ劣らぬ仕上がり
公開 : 2025.04.19 20:45
チャップマンを師として仰いだスナッシャー チューブラー・シャシーは僅か22kg 路面へ吸い付くように低いボディにコベントリー・クライマックス・エンジン 英国編集部がレアな1台をご紹介
もくじ
ーアスファルトへ吸い付くように低いボディ
ーレーシングカー的な気まぐれさはない
ー1950年代のロータスへ劣らない仕上がり
ー番外編:コベントリー・クライマックスの4気筒
ーF1での優勝も飾ったFWユニット
アスファルトへ吸い付くように低いボディ
エドウィン・ジョセフ・スナッシャー氏が作ったワンオフのスポーツレーサー、EJS-クライマックスが目前にある。歩み寄ると、そのコンパクトさへ驚かずにいられない。
サイズ的には、1950年代のロータスMk VIIIへ近い。しかしテールフィンがないぶん、一層小さく見える。

アスファルトへ吸い付くように低いミストラル・ボディへ、スナッシャーは独自のディティールを与えた。ヘッドライトは、フロントフェンダー上へ据えられるのが一般的だったが、彼はそもそも装備しなかった。両サイドに、小さなマーカーランプが灯る。
サイドのエアアウトレットは、ミストラル本来のデザインだが、穴は開けられなかった。ウエストラインのストライプは、彼がペイントしたもの。ノーズのエアインテーク内に備わるヘッドライトと、ロールオーバーバーは、最近になって追加されたものだ。
長年放置された結果、エンジンは過熱しやすい状態とのこと。フロントのエアインテークは小さく、エンジンルームはほぼ密閉状態。冷却系が完璧な状態にない場合は、水温は簡単に上昇してしまう。
筆者が全力を発揮させられた時間は、あいにく限られた。操縦系は、レーシングカーらしくダイレクトで容赦ない。だが同時に、攻め込んでも不安を感じさせる要素はほぼない。
レーシングカー的な気まぐれさはない
バケットシートはタイトで、クラッチペダルは極めて重い。エンジンは即座に反応し、優しい発進を試みてもリアタイヤは軽く空転する。車重は405kgしかないが、ピットレーンの速度域ではステアリングホイールも重い。
クライマックス・エンジンは、しっかり回さないと充分なトルクを生まない。とはいえ一度走り出せば、レーシングカー的な気まぐれさはない。コーナリングはニュートラル。ボディロールは殆ど伴わない。

充分には開発が煮詰められていない、独自設計のサスペンションだから、高負荷時の特性にはある種の癖が現れる。しかし、スナッシャーのアプローチが正しかったことは、間違いないだろう。
EJS-クライマックスの走行距離は、800km程度だと推定されている。もっと走り込まれ、開発へ時間が割かれていれば、更なる修正は可能だったように筆者は感じる。
ブランズハッチ・サーキットのイベントで、どの程度のクラッシュに至ったのかは明らかではない。怪我は軽微なものだったとしても、恐怖は相当に大きかったのだろう。
彼は、優れたスポーツレーサーの創出に挑んだが、抜きん出たドライバーを目指したわけではない。ル・マン24時間レースの優勝経験を持つルイ・ロジエ氏が、1956年11月にスポーツカー・イベントで命を落としたことも、判断へ関係したように想像できる。
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