成功を導いたターボ 生粋のスウェーデン車:サーブ900(2) エンジンはトライアンフ譲り
公開 : 2025.05.18 17:46
航空機メーカーがルーツで、北欧の匂いが強いサーブ900 肉厚な鋼板でプレスされた高耐久ボディ 世界最高水準の衝突安全性 エンジンはトライアンフの派生版 UK編集部が魅力を振り返る
4気筒エンジンはトライアンフの派生版
強いこだわりを持っていたスウェーデンのサーブだが、自社でエンジンを設計はしていない。初の量産モデル、92に搭載された0.8Lの2ストローク・ユニットは、ドイツのDKW譲り。後継モデルの96には、フォード製のV型4気筒エンジンが載っていた。
その後の99と、進化系となる初代900に搭載されたエンジンは、本来はトライアンフ・ドロマイト用。英国のリカルド・エンジニアリング社が設計した、2.0L 4気筒だ。

ドロマイトと同様に、45度傾けられてエンジンルーム内に縦方向へ収まり、クラッチは前側。この配置のおかげで、クラッチ交換は驚くほど簡単に済ませることができた。オルタネーターは、後方のバルクヘッド側に位置している。
このエンジンは、2009年までスウェーデンの工場でライセンス生産が続いた。サーブの手で、多くの改良が加えられて。
成功を導いたターボ技術 1984年に最高潮
900の発表は、1978年のドイツ・フランクフルト・モーターショー。当初から好評で、初年度の1979年式は6万3400台が売れている。1984年に最高潮を迎え、年間8万8188台がラインオフし、ミドルクラスでBMWなどに並ぶ地位を掴み取った。
ちなみに、その祖先となる99は1984年まで生産されている。V型4気筒エンジンを積んだ96も、1980年まで提供された。

900の成功を導いたのは、高い安全性や個性的なスタイリングだけではない。99の世代から培われていた、ターボチャージャー技術が与えられ、賢明な選択肢としてのイメージが醸成されていった。
147psと24.4kg-mを発揮する2.0L 4気筒ガソリンターボは、自然吸気エンジンより最高出力が23%高く、最大トルクは45%も太かった。サーブは高度な安全性だけではなく、興奮を誘う走りも提供したといえる。
6気筒エンジンへ迫る粘り強さと滑らかさ
ただし、パワー特性は高域ではなく、中域での力強さを重視したもの。粘り強さと滑らかさは6気筒エンジンへ迫りつつ、燃費効率は悪くなく、排気ガスも充分環境へ優しかった。スポーツカー以外にもターボを普及させた、立役者といっていい。
不要なブースト圧を抜く、ウェイストゲート技術もひと足先に採用。同時期のドイツ製ターボモデルより、耐久性が確保されていた。後年にはブースト圧を調整しノッキングを防ぐ、APCシステムも導入されている。

900には自然吸気エンジンも用意され、同じ1985ccで119psを発揮するインジェクションが上位ユニット。グレードは、GLEとEMSを名乗った。その下に、シングルとツインキャブレターのGLとGLSが続いた。
ボディスタイルは、大きなテールゲートを背負った3ドアか5ドアのリフトバックでスタート。後者には、リアピラー部分にオペラウインドウが備わり、開放感が高められていた。後に、2ドアと4ドアのサルーンが加わっている。