高速域では想像以上の熟成感 最新 ヒョンデ・インスター(2) 固定概念を覆すひと押しが欲しい
公開 : 2025.06.09 19:10
従来のカテゴリーに縛られない小さなEV、インスター ロングレンジなら49kWhで368km 見た目以上に広い車内 余裕は感じにくい114ps 高速域では想像以上に熟成のマナー UK編集部が試乗
もくじ
ー発進直後は活発 114psでも余裕は感じにくい
ー高速域では想像以上に熟成されたマナー
ー走りの印象は薄味 航続距離はカタログ値へ迫る
ー固定概念を覆せるもうひと押しが欲しい
ーヒョンデ・インスター 02(英国仕様)のスペック
発進直後は活発 114psでも余裕は感じにくい
新しい小型バッテリーEVの、ヒョンデ・インスター。試乗車は大容量バッテリーを積むロングレンジだったが、最高出力は114psで、1423kgの車重に対して余裕あるパワーとはいえないだろう。0-100km/h加速には、10.6秒を要する。
発進直後は、ノーマル・モードでも不満なく活発。速度域の低い市街地なら、充分キビキビ走り回れる。しかし、その勢いは速度上昇とともに衰える。

スポーツ・モードへ切り替えると、加速力は1段増す。それでも60km/hを超えると、少しの息苦しさは拭えない。同クラスのエンジン車と比較して、数100kg多い車重が影響していることは明らかだ。
高速域では想像以上に熟成されたマナー
ステアリングホイールやペダルなどの重み付けは良好で、反応も予想通り。回生ブレーキの強さは、パドルで数段階から切り替えられる。
全幅は狭めで、市街地での取り回しの良さは明確な強み。路肩の駐車車両の脇を、スルスルすり抜けられる。流れの速い郊外や高速道路では、想像以上にマナーは熟成されている。ボディの動きは若干大きめながら、安定性は高く快適と呼べる。

乗り心地は全体的に優しく、大きな段差では跳ねるような挙動を示すが、アスファルトのツギハギなどを柔らかくこなす。カーブでのグリップ力も充分以上。試乗車には、ミシュラン・パイロットスポーツ5が組まれていた。
多くのユーザーが好印象を抱くであろう、滑らかさを叶えている。一方で、ステアリングはレシオがスローで、フィードバックは薄め。運転が楽しいとまでは表現しにくい。
走りの印象は薄味 航続距離はカタログ値へ迫る
小さなエンジン車の場合、軽さと充分な馬力の組み合わせが生む、小気味良さが強みになる。敏捷な身のこなしが、運転の楽しさへ結びつく。マニュアル・トランスミッションを操るという行為も、クルマとの相互関係を深めてくれる。
他方、インスターに限らないものの、軽くない車重とシングルスピード・トランスミッションの組み合わせは、走りの個性や高速域での余裕を薄めがち。このクラス全体の課題といえるだろう。

とはいえ、少なくない競合と比べて、インスターの走りは洗練度が高い。試乗時の電費は、カタログ値の6.6km/kWhを平均で超えており、効率の良さも売りになる。主張通りの航続距離を、現実的に得られそうだ。
急速充電は最大85kWまでと、速いわけではない。残量10%から80%までの回復には、30分ほど必要になる。