毎日が喜びに満ちた時間 BMW i5 ツーリング 長期テスト(最終) 効率的に粛々と仕事をこなす

公開 : 2025.06.10 19:05

BMWを支えてきたステーションワゴンがEVに 英国価格は約2000万円 総合600psを発揮するM60 xドライブの能力は? 最新世代の5シリーズ・ツーリングを長期テストで検証

積算2万1756km 毎日が喜びに満ちた時間

長期テストの期間を終えたi5 ツーリングは、BMWへ帰っていった。振り返ると、ほぼすべての毎日が喜びに満ちたものだった。5シリーズのバッテリーEV版は、典型的なドイツ製の上級ステーションワゴンだった。

プラットフォームは7シリーズと共有し、全長は5060mm、全幅は1900mmと巨大だが、M60のツインモーターは総合600psを発揮。駆動用バッテリーは81.2kWhの大容量で、0-100km/h加速を3.9秒でこなし、最高速度は230km/hが主張されている。

BMW i5 M60 xドライブ・ツーリング(英国仕様)
BMW i5 M60 xドライブ・ツーリング(英国仕様)

車重は2425kgと軽くはないが、最新のM5 ツーリングより重くない。現代の5シリーズを体現するように思えた。極めて速くストレスフリーで、装備に優れ快適だった。

乗り心地は、より肉厚なタイヤなら、もっと優しくなっただろう。扁平率の低いピレリPゼロは、動的特性重視といえた。しかし、同乗した人から乗り心地が硬すぎると不平が漏れたことは、なかったと記憶している。

効率的で粛々 真のドライバーズカーではない

ドライビングポジションは低く、重心も低く、ボディロールは印象的なほど小さい。ステアリングは清々しくクイックで、反応は正確。アクセルレスポンスの精緻さにも驚かされた。それでも、真のドライバーズカー、というわけではないだろう。

一体感や相互関係性は、強くない。深い記憶を残すほどでもない。数年前に試乗し、ダンパーが温まるほど好印象になった、ポールスター2の方が鮮明に記憶が蘇ってくる。

BMW i5 M60 xドライブ・ツーリング(英国仕様)
BMW i5 M60 xドライブ・ツーリング(英国仕様)

クルマとしては、i5 ツーリングの方がベターだ。しかし、カリスマ性を感じさせるというより、効率的に粛々と仕事をこなすクルマ、といった雰囲気が強い。そのぶん、高速道でも一般道でも、日々の自動車移動に溶け込んでいた。

お借りしていた期間で、メンテナンスは不要。タイヤの溝は減りがゆっくりで、フロントは更に3万km、リアはもっと長く使えるだろう。お値段はお高めで、数年後の残存価値は目減りが大きいかもしれないが、英国では税制的に優遇されてもいる。

手で直接変えられないエアコンの送風口

約2万kmも走ったことで、一連の動作が身体に染み付いていた。パワーオンにした後は、センターコンソールのボタンとタッチモニターへ触れ、車線維持支援と交通標識認識の機能をオフにするのが日常だった。

人間工学的には、ステアリングホイール上のダイヤルでオーディオを操作できるなど、褒めたい部分も多い。反面、エアコンの送風口の向きを手で直接変えられないなど、気になる部分も混ざっていた。キーレスエントリーを有効にする方法も、理解が難しかった。

BMW i5 M60 xドライブ・ツーリング(英国仕様)
BMW i5 M60 xドライブ・ツーリング(英国仕様)

アップル・カープレイの動作は、稀にもたついた。それでも、些細なこと。大きな問題はなかったといえる。

ちょっとしたライフハックも発見した。例えば、混雑した市街地で徐行する場合などは、一度シフトセレクターをRに入れてからDにすると、360度カメラの映像を起動したまま進むことができたりする。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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