ポルシェ・ケイマンGT4

公開 : 2015.03.10 23:50  更新 : 2017.05.29 19:04

■どんな感じ?

“保守的かも知れないが、決して時代遅れでのやり方ではない” と先に記したが、乗った後、まさに的を得ている表現だと感じた。

まずシートに体を収めたあと、抜群のサポート性能を誇るバケット・シートとアルカンターラの滑りにくいシートが、”お?硬派かな?” と感じさせる。

これが確信に変わるのは、キーを捻ったあと。激昂したかのような、吠えまくるエグゾースト・ノートを聞いた時だ。”間違いない” と嘆声を漏らしてしまった。

変速マナーは極めて精緻な感触をともない、エンジンのレスポンスも研ぎ澄まされている。現行の911GT3ほどではないにしろ、その切れ味は確かである。

地面の情報の伝え方には硬質さをともなうが、この場合 、’ハーシュネス’ と表現するのは適切ではない。不躾な衝撃とは程遠く、あくまで正確でありながら、できる限り優しく情報を手元や臀部に伝えてくれるのだ。

組み合わせるタイヤの銘柄はミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2。サイズはフロントが245/35 ZR19、リアが295/30 ZR20インチとなる。

アダプティブ・ダンパーのセッティングは硬軟2パターンが用意され、柔らかいほうのモードでもコントロール性能は驚くほどたかい。

その理由は、ソフト・モード時の煮詰めをニュルブルクリンク・ノルドシェライフェで行ったことにあるようだ。ハード・モードは、よりモダンでなめらかなサーキットに向いた仕立てになっている。

たしかにサーキットにフォーカスしたクルマであることに変わりないが、苦痛に耐えながら一般道を運転することはない。

理由の1つとして挙げられるが、’速さ’ である。この ’速さ’ は385ps/7400rpmのみからもたらされるのではなく、42.9kg-m/4750rpmによる影響も大きい。

ギア比こそGTSと同じであるが、追加分のトルクのおかげで、GT4は常にパワーがみなぎっているようにも感じられる。

エンジンとギアボックスのレスポンスの時差は皆無と言っていいし、またシャシーとステアリングに関しては、速度域とはまったく関係なく、伝えてくれる情報量が多い。

たしかに情報量が多いクルマなら山ほどある。しかし、である。ケイマンGT4の情報量も圧倒的に多いのだが、しかもその伝え方がとても巧い。

多くの人が頭を悩ます難解な公式を使うだけならば何とかできるのだが、それを分かりやすく伝えるのは非常に難しいことを経験した読者は多いはずだ。

しかし、それを何事もなかったかのように、いとも簡単に要点を突いて教えてくれる人も中にはいる。そんな秀才を、ケイマンGT4を運転することによって思い出した。

すべての動作に濁りが全くなく、運転のやり甲斐もこの上なく感じる。ステアリング、ギアボックス、ブレーキ/スロットル・レスポンスの全ては正確そのものであり、ため息が出るほどリニアだ。

ケイマンGTSと比べても、約200万円分の付加価値が与えられるといっても、まったく過言ではない。

サーキット上でのマナーも完璧。”サーキットに重きを置いた” という表現も伊達じゃない。

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