フォルクスワーゲンのエミッション・スキャンダル詳細

公開 : 2015.09.22 22:50  更新 : 2017.06.01 02:04

既に日本でも報道されているが、フォルクスワーゲンが、アメリカにおけるエミッション・テストで不正を行った件について、米国議会審査会で本格的な調査が月曜日にスタートした。

フォルクスワーゲンのCEO、マーティン・ウィンターコルンは、同社がアメリカにおいてエミッション・テストを偽ったことに対して「顧客の信用、そして公共性を失った」として謝罪をしている。

アメリカ環境保護局(EPA)と、カルフォルニア・エア・リソース委員会(CARB)は、フォルクスワーゲンの2.0ℓ4気筒ディーゼルのテストにおいて、検査中のみ有効となる違法な電子操作が行われたという。この件は、引き続きアメリカ議会の行政監視及び調査小委員会で調査が行われる。

「厳しい排出ガス規制は、公衆衛生を保つために実施されているものだ。」と、下院エネルギー・商業委員会の議長、フレッド・アプトンと、行政監視及び調査小委員会の議長、ティム・マーフィーは共同して声明を発表している。「アメリカ合衆国は、世界中のメーカーに対して、EPAが定めたエミッションをクリアするよう求めている。しかし、特定のフォルクスワーゲンは、このEPAのテストを虚偽にクリアするためのソフトウェアが組み込まれていた。この不正は重要な問題だ。」とも語った。そして、「もしこれが事実なら、消費者は騙されたことになる。」ともコメントしてる。

米国議会の審理の日にちはまだ決定していない。

このスキャンダルはフォルクスワーゲン・グループの株価にも大きな影響を与えた。フランクフルト証券取引所では、このスキャンダルが発覚して最初の月曜日に特に大きく値を下げた。一時は23%ほどの急落を見せた。企業価値は、この1日だけで€150億(2兆円)も下落したことになる。

フォルクスワーゲンとアウディの幾つかのクルマは、実際のエミッションよりも、テストが行われる時に良い数値が出せるという “無効化機能” を装備していたのだ。このデバイスはECUのソフトウェアに組み込まれているもの。この無効化機能を組み込まれると、酸化窒素量を最大40倍までごまかせるという。もし、実際に40倍の酸化窒素が放出されていたとすれば、これは喘息をはじめとする肺疾患に影響を与えるものである。

もちろん、この無効化機能は、いうまでもなく反社会的行為として、各国の自動車排出ガス規制に禁止規定が明文化されているものだ。

今回のこの無効化機能を搭載した対象となるクルマは、2009年から2014年までのジェッタ、ビートル、ゴルフ、アウディA3、そして2014年から2015年のパサートだ。

すでにフォルクスワーゲンは問題となったディーゼル・エンジンを搭載したフォルクスワーゲンとアウディの販売を中止している。EPAとCARBは、既にこれに対応するクルマのエミッションの改善を命令しており、フォルクスワーゲンはそれに従い482,000台以上の回収を行うことになる。

EPAは、「フォルクスワーゲンとアウディが、これらの回収と改善に最善の策を作成し、それがEPAが認めるものであれば、実際の作業を完了させるための合理的な時間の猶予は与えられる。」としている。

フォルクスワーゲンは、ファイナンシャル的な罰を受けると同時に、法的な問題も抱える。

まず、回収のためのコストは21億円。それと同時に民事的な責任を追うことも考えらえる。既にシアトルに本拠を持つ有名なロー・ファーム、ケラー・ローバックが集団訴訟を考えているようだ。

ケラー・ローバックのリン・リンカーン・サルコは、「クリーンなモデルということで、何千ドルものプレミアを払ったクルマが、実は大気汚染を引き起こすクルマだった。フォルクスワーゲンは非常に卑劣なことを行った。」と批判している。

ウィンターコルンは、この件について外部調査を命じている。「フォルクスワーゲンの取締役会は、真面目にこの調査に取り組み。その結果を発表する。われわれが、今回、顧客のみならず市民の信頼を損ねることになってしまったことは非常に残念だ。この問題がクリーンに、そして「スピーディに解決するようにフォルクスワーゲンは全力を尽くす。今回の件についても、いかなる種類の不正であったも見逃さないつもりだ。われわれと顧客と市民との間の信頼というのは、我が社のとって重要な財産であり続けるからだ。われわれは、失った信頼を再構築しなければならない。そのため、いままで与えた損害については、必要なすべてを行って補うつもりだ。今回のこの問題の解決は、フォルクスワーゲンにとって再優先事項だ。」と語った。

フォルクスワーゲンのディーゼル・モデルは、アメリカの隣国、カナダでも現在販売が中止されている。そのエミッション・テストがアメリカと酷似しているからだ。

ヨーロッパやイギリスにおいては、そのテスト方法が異なるため、現時点での販売中止は考えていないと、フォルクスワーゲン・ヨーロッパのスポークスマンは語っている。

既にこの問題は、一企業だけの問題ではない。ドイツの経済相、シグマー・ガブリエルも今回の問題について、自国の自動車メーカーの評判がどうなるかを非常に心配している。

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