フェラーリ・チャレンジ・アジア・パシフィック2016 第6戦

2016.10.15〜16

text&photo: Kazuhide Ueno(上野和秀)、photo: Ferrari Japan

 
フェラーリよるワンメイク・レースがフェラーリ・チャレンジだ。1993年にイタリアで始まって以来、ヨーロッパ、アメリカ、アジア・パシフィックの各エリアで行われるようになり、マシンも348チャレンジからF355チャレンジ、360チャレンジ、F430チャレンジ、458チャレンジへと進化を続け、2014年からは458チャレンジEVOで闘われている。

今年のアジア・パシフィック・シリーズは、3月のフェラーリ・レーシング・デイズ鈴鹿で開幕し、アブダビ、上海、セパン、シンガポールと転戦してきた。シリーズとしては12月にデイトナで開かれるフィナーリ・モンディアーリが最終戦となるが、アジア・エリアのラストレースがWEC富士6時間のサポートレースとして行われた第6戦だ。土曜日に予選と第1レース、日曜日に第2レースが行われた。

今回はアジア・パシフィック・エリアのドライバーのほか、アメリカ、ベルギー、スウェーデンからの参加に加え、地元のレースということもあり10名(出走は9名)の日本組を含む29台がエントリーした。フェラーリ・チャレンジ・シリーズはドライバーの経験や技量に応じて最高クラスのトロフェオ・ピレリ、トロフェオ・ピレリAM(アマチュア)、コッパ・シェルの3クラスに分けられている。このほか55歳以上のドライバーを対象としたジェントルマンズ・カップがコッパ・シェル・クラス内に用意される。

RACE-1

予選とレース1が行われた土曜日は、快晴に恵まれまさにレース日和。トロフェオ・ピレリ・クラスでは、ポールポジションのスティーブ・ワイアットがスタートを決める。しかし2番手スタートのメルクスが追い上げ、7周目にトップに踊り出ることに成功し、そのままチェッカーを受けた。

ピレリAMクラスは選手権リーダーのジン・キシンが勝ち取り、エリック・チャン、米国のジェームズ・ウェイランドが続いた。ポールからスタートした日本のキシモト選手はアクシデントで痛恨の5位に留まり、マックス・ゴー選手は追突されてスピンを喫し6位でレースを終えた。

コッパ・シェル・クラスではいくつかのドラマがあった。選手権リーダーのリャン・ワンは慎重にスタートしたため、そこにスカイ・チェンが追い付いた。しかしチェンは数周後に他車と接触し、右ドアを損傷して左コーナーでドアが開いてしまう事態に。しかしマシンの修復を命ずるブラック・フラッグを無視したことから、スカイ・チェンは失格になってしまった。

15周目にはピレリ・クラスに食い込む総合3位でプッシュしていたユアン・ヤンが、ダンロップの入口でマシンのコントロールを失いガードレールに激しく衝突して闘いを終える。しかしマシンは大破したが、ドライバーは無傷で脱出でき、458チャレンジEVOの安全性の高さを証明した。これによりセト選手はジェントルマンズ・カップも勝ち取って2位に繰り上がり、ポール・モンタギューが3位となった。リャン・ワンはこの勝利により実質的に2016年のシリーズ・タイトルを確定させた。

RACE-2

トロフェオ・ピレリ・クラスでスティーブ・ワイアットとレノルディ・フータソイがスタートを決めたが、選手権リーダーでポールのフロリアン・メルクスには及ばなかった。その後メカニカル・トラブルとアクシデントから6台が戦列から離れてしまう。
8周目のアクシデントでトラック上に破片が出たため、セーフティカーが入りリスタートされることになった。プレッシャーの中でトップのメルクスは好スタートを決め、フータソイからのプレッシャーを撥ね除け3.6秒の差を付けてトップでチェッカーを受けた。これによりメルクスは、4連勝を果たすと共に今季5勝目を記録したが、シリーズ・タイトルの決着は12月の最終戦までお預けとなった。

ピレリAmクラスでは波乱があった。選手権リーダーのキシン・ジンはジェームズ・ウェイランドを攻めたが、ミスから衝突し2台ともリタイヤに。これによりキシモト選手がトップとなり、エリック・チャンが2位に浮上。このあと大きな動きはなく、日本人ドライバーのキシモト選手が優勝を果たし、総合でもピレリ・クラスに食い込む3位と大健闘した。

マックス・ゴー選手も本領を発揮して3位を獲得し表彰台に登ることになった。ハンはゴー選手に続く4位でレースを終えた。ここでジンがノーポイントに終わったため、チャンピオンシップの行方は、こちらもデイトナで決着を付けることになった。キシモト選手は、「初めてAPACに挑戦して2レース目で優勝でき、本当にエンジョイできた。これからも勝利を目指してゆきたい」と語った。

コッパ・シェル・クラスは変化に富んだ展開となった。選手権リーダーのリャン・ワンはスタート決め、セト選手、ポール・モンタギュー、シャオというオーダーで進む。レース1ではアクシデントでリタイヤしてしまったジア・スーは最後方からスタートしたが、驚異的な追い上げを開始して10周目にトップヘ浮上し、そのままチェッカーを受けた。2位には2016年のチャンピオンを決めたリャン・ワンが続き、3位はセト選手が勝ち取り2レース共表彰台に上がる活躍を見せた。

フェラーリ・チャレンジ・シリーズは、このあと世界最終戦となるフィナーリ・モンディアーリが12月にデイトナで開かれる。各クラスのシリーズ・チャンピオンの決着をつけると共に、フェラーリ・チャレンジ遣いの世界一を決める特別レースも開催される。

  • トロフェオ・ピレリ・クラスは、メルクスが7周目にトップに立つと、そのままチェッカーを受けた。

  • #22のコーンズ・カラーの458チャレンジEVOに乗るキシモト選手は、第2レースのピレリAmクラスで優勝。

  • コッパ・シェル・クラスを闘うセト選手は、レース1で2位、レース2は3位と連続表彰台を勝ち取った。

  • もう1台のコーンズ・カラーの#78は、タナカ選手のドライブでトロフェオ・ピレリ・クラスに挑んだ。

  • 近年はラッピングが普及したことから、カラフルで複雑なカラーリングがポピュラーになってきた。

  • 今回のレースで様々なドラマが生まれたダンロップ・コーナーを行くキタイ選手と458チャレンジEVO。

  • 土曜日は快晴に恵まれ、隠れがちな富士山も終日姿を見せていた。

  • 各コーナーではアグレッシブなバトルが繰り広げられた。

  • レースは25分のタイムレースで行われ、トップは15周を記録した。

  • トロフェオ・ピレリ・クラスでメルクス(中央)は、レース1とレース2を制し今期4連勝をマークした。

  • ピレリAMクラスのレース2はキシモト選手(中央)が優勝しゴー選手(右)はレース1の雪辱を晴らす3位に。

  • セト選手はコッパ・シェル・クラスのレース1で2位、レース2は3位と連続表彰台を勝ち取った。

  • 富士スピードウェイのパドックには、イタリア・ラウンドでおなじみの大型テントが設置された。

  • テントはマシンが縦に2台収容でき、控え室や倉庫も設けられている。今回のレースのために持ち込まれた。

  • セーフティカーはチャレンジでおなじみのウブロのマーキングが施された488GTBが使われた。

  • フェラーリ・チャレンジのタイヤはレース毎に支給されるもので、スタート時からピレリが担当する。

  • フェラーリのホスピタリティはイタリアそのまま。焼き立てのピッツァや目の前で作るパスタが振る舞われた。

  • レース1の各クラスの優勝者のコメントと、GTコルセのドライバーと共にフォトセッションが行われた。

  • #22 キシモト選手/ピレリAM/レース1:5位、レース2:優勝

  • #24 マックス・ゴー選手/ピレリAM/レース1:6位、レース2:3位

  • #78 タナカ選手/トロフェオ・ピレリ/レース1:5位、レース2:RT

  • #107 セト選手/コッパ・シェル/レース1:2位、レース2:3位

  • #112 チェン選手/コッパ・シェル/レース1:DNF、レース2:4位

  • #114 キタイ選手/コッパ・シェル・クラス

  • #115 コンドー選手/コッパ・シェル/レース1:9位、レース2:12位

  • #128 ワタナベ選手/コッパ・シェル/レース1:8位、レース2:DNF

  • #182 アダチ選手/コッパ・シェル/レース1:10位、レース2:8位




▶イベント・レポート / フェラーリ・レーシング・デイズ 鈴鹿2016

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