時代の寵児か、それとも徒花か グループBポルシェ、959に乗る

公開 : 2017.04.02 00:30  更新 : 2017.05.29 19:03

今なお印象的なスタイル

その当時、スタイル的に大人しく、控えめであったスーパーカーが、30年以上も経った現在、エキゾティックなミウラやヴェイロンと駐車場で並べてさえ、これほど印象的であるのは驚くべきことである。しかし、ランボルギーニとは異なり、その美しさは見る人をかなり選ぶ。959のテールが、トランスポーターから出てくる。一定の角度から見ると、17インチの中空スポークのマグネシウム・ホイールが洞窟のようなホイール・アーチの中に埋まっているように見える。その瞬間、ホイールの上に座っているようなその独特の姿勢に衝撃を受けざるを得ない。

近づいてみると、ドアに当たった光が、奇妙な反射や波紋を生み出している。これは、959の羽根のような軽量素材によるものだ。911の重いスチール製のドアの外板やボンネットとは異なり、959には、珪素とマグネシウムを混合したアルミニウム合金が使われている。また、ノーズの部分も、驚いたことにガラス繊維で強化したポリウレタンの一体成型であり、さらに他のパネルにはケブラー及びガラス繊維が使われている。

今回取り上げたクルマは、チューンアップされた583psの水平対向6気筒エンジンを誇っている。


素材も実にハイテクであるが、最初に発表されたときに最も関心を集めたのが959の6気筒、ツイン・ターボチャージャー・エンジンだった。水平対向6気筒2849ccエンジンは、911から導入されたものの、部分的にはグループCのレースから学んだ教訓をもとに全面的な改良が加えられ、設計要件とされた456psを生み出すことに成功した。

911とは異なるエンジン冷却システム

ポルシェにとっての最大の技術的飛躍は、エンジンの冷却方法に関するものだった。空冷のみでは十分な熱を取り除くことができないため、4バルブのシリンダー・ヘッドのそれぞれに、吸気カムシャフトによって駆動される独自のポンプを備えた追加的な水冷システムを組み込んだ。エンジンを点火した瞬間から、この年代の一般的なポルシェとは異なるノイズ、すなわち、エンジン・ベイから送られ、循環する冷却水のヤカンのような泡立ちの音が聞こえてくる。その一方で、エンジン・ブロックを冷却するためにクランクによって駆動されるファンを用いることは、911の流れを汲んでいる証拠であり、また、各シリンダーの下面にオイルをジェット噴霧している。

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非常に洗練された駆動系

しかしながら、959の最も魅力的な機構は、洗練された駆動系と、前輪に伝達されるトルクを増やすためにプレートにかかるプレッシャーを変化させるPSK電子制御クラッチかもしれない。通常の運転条件下かつ等速の場合、出力は、959の重量配分に合わせ、40:60に設定されているものの、急加速の際には、エンジン出力の最大で80%が後輪に配分される。簡単な4方向スイッチを使えば、路面状況に応じ、更に細かく制御することができ、ディファレンシャルをロックするオプションさえ存在する。

それでも足りないかのように、クルマのハイドロニューマチック機構を車内から制御し、車高を最低値の119mmから最高値の180mmまで調整する仕組みが用意されている一方、ダンパーの硬さをソフト、ミディアムまたはハードの3段階に設定することもできる。車高、ダンパーの硬さ、そしてトルク配分を革張りの快適なキャビンの中から操作するのは実に楽しいものの、運転に集中したければ959が自動的に構成してくれる。速度が上昇するほど、車高が下がり、ダンパーが硬くなり、最高車高は80km/hでキャンセルされ、160km/hで標準設定の119mmに復帰する。また、コーナーに突入する際に、ダンパーが自動的にハードに設定され、低速で気になるボディロールを抑える。

これが、4駆動輪とも相まって、驚異的な走りを生み、最もタイトなコーナーでも限界がないとさえ思えるグリップが得られることにになる。更に長いコーナーでもクルマの挙動は安定しており、実に落ち着いている。ほとんどの4輪駆動車の通弊としてアクセルを踏むとアンダーステア気味になる。しかし、今回取り上げた959の場合、ステージ2までチューンされたエンジンから583psのパワーを自由に引き出せるため、アンダーステアは許容範囲内に過ぎない。

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