伊仏2台のスモール・ホットハッチ、デルタHFターボ & サンクGTターボ

公開 : 2017.05.21 00:10  更新 : 2017.05.29 19:22

ボディ・サイズの違いはあれども

デルタHFとサンクGTターボを並べてみると、ふたつのことが明らかになる。1つ目は、それぞれのサイズの違いだ。デルタHFは箱を組み合わせたような、がっしりとした出で立ちで、小柄で華奢なサンクGTターボよりも実際のサイズ以上に大きく見える。

デルタHFやゴルフII GTiがデビューした当時、既に多くのハッチバックが一回り大きいコンパクト・ファミリー・クラスへと遷移しており、残された小ぶりな「スーパーミニ」たちは数少ないライバルと死闘を繰り広げることになった。

ならば、サイズが違う2台を突き合わせるのはナンセンスなのだろうか? そんなことは全くない。デビュー当時、2台はそのパフォーマンスの高さを、これでもかと競い合っていたのだから。

風変わりなインテリアと心地よいシート。

残念ながら残存数は少ない

2つ目に明らかになったのは、2台の稀少性だ。最後に路上で見かけたのはいつのことだろう? 確かにこの数十年の間に製品の品質や信頼性は、当時に比べて高まっているのだが、それでも極めてわずかな数の個体しか残っていないのは悲しい事実である。

この記事のために連れ出した2台はどちらも後期型の1990年モデルだ。デルタHFは、意匠変更を受けたバンパーを装着し、サンクGTは力強い色調のボディ・キットをまとっている。ラテンからの放蕩者、デルタHFは直線で大暴れすることを、ボディ上の細やかなディテールから醸し出している。

いかついフロントフェイスではあるが、腰高で少々不格好なリアのスタイリングよりもずっとましだ。

最後期型ルノー・サンクには1397cc4気筒ターボユニットが横置きマウントされ、最高出力は122psを謳った。

今なお魅力的なサンクGTターボのフォルム

驚くことにサンクGTの方は、スタイリングが今日でも十分魅力的であることに気づかされる。フランスらしい黄色いフォグ・ランプの輝きも含めて、とても味わい深いスタンスである。

無意識にデルタHFターボとデルタ・インテグラーレを比べることがあったとしても、サンクGTターボと野獣のごときサンク・ターボを「別物」として捉えてしまうのは、おそらくサンク・ターボの方が先発であり、GTターボの進化形とは言えないからだろう。

「80年代を過ごした人なら誰だってルノーのキャビンを気に入るはずだ」という意見に否定的な考えをお持ちならば、ここに見るべきものはないから他の特集へ移った方がいい。というのも、82年に世に送りだされた8ビット・コンピューター、コモドール64とビデオ・ゲームのダブル・ドラゴンの光景が混ざり合ったようなインパネ周りは一見の価値があるし、ふかふかの座面に、豊かなサポートを提供してくれるサイド・クッションなど「フリーサイズ」という言葉を体感してみたいならば、サンクGTターボのシートに座ってみるのが一番手っ取り早いからだ。

しかし、シートの脇にはドア・パネルやストレージ・ボックスが立ちはだかっており、室内空間に余裕があるとは言い難い。その反面、デルタHFのキャビンは比較的広々としている。プラスティック素材の質感や、ウールを織り込んだハーレム柄とアルカンターラを組み合わせたシート、モモ製の本格的なレザー・ステアリングなど、絶妙な塩梅で仕上げられている。

そうした環境に身を沈めると、高めにセットされたドライビング・ポジションと、面積の大きいガラスのおかげでファースト・クラスのように視界は広い。

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