80年代ヒーロー対決 M3スポーツ・エボ vs シエラRSコスワースvs 190E 2.5-16(2)

公開 : 2017.11.04 11:40  更新 : 2021.01.30 21:04

直線加速で圧倒 ただし重心高のネガも

RSコスワースのステアリングを握ってしばらくの間は、後方視界のあまりの悪さに、恐怖に怯えながら控えめに走った。しかしそれもつかの間。このクルマのステアリングの確かな手応えや、鮮やかなまでの回頭性の良さ、そして刺激的な動力性能に触発されて、気がつけばほとんど全開に近い状態で走っていた。

M3スポエボと190E 2.5-16に比べて、RSコスワースの直線加速は明らかに速い。3000rpmに達すると、ターボはフルブーストゾーンに突入し、その瞬間、テールを激しく沈み込ませながら地の果てめがけて突進していく。

その反面、鋳鉄ブロックにアルミヘッドを組み合わせた4気筒エンジンが発生する騒音は興ざめだ。M3スポエボと190E 2.5-16のエンジン音は軽快かつ耳に心地よいが、RSのそれは、まるですり減った針でレコードを回しているような雑音にすぎない。

コーナリングでは、他の2台に比べて重心位置が極端に高いネガが顔をのぞかせる。ロールが大きく、アンダーステアも強く現れるので、速く走らせるためには相当の度胸と、時として強引に振り回すテクニックが必要とされる。RSコスワースには現代のよくできたハッチバックが失ってしまった「気」が宿っている。それに乗り手が呼応して、初めて本領を発揮するのである。

RSコスワースの誕生から1年後(それまでに6000台ものRSコスワースが生産された)、大型のターボチャージャーを備えたRS500コスワースがデビューした。このグループA仕様は、2.0barのブースト圧で実に550psを発生したという。

スタンダードのRSコスワースを走らせただけで、わたしにはグループA仕様のRS500コスワースがどのようなクルマだったか容易に想像がつく。たったの204psでも、このクルマは当時のツーリングカーの雰囲気を存分に愉しませてくれるのだ。

だが、公道では後方から迫ってくるパトカーにはくれぐれもご用心を。ルームミラーの大半は、ウイングによって遮られてしまっているのだから。

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