ロードテスト ジャガーIペース ★★★★★★★★★☆

公開 : 2018.09.24 10:10  更新 : 2019.04.19 17:24

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★★★☆

往復走行で試した0-96km/h加速の平均時間は4.5秒で、ファミリーカーとしては紛れもなく速いクルマに属する。加えて、日常的な走行スピードでの加速マナーは、特筆に値する。48km/hから112km/hへの加速時間はわずか3.5秒。これはスーパーサルーンを凌駕するペースで、メルセデス・ベンツC63 AMGブラックシリーズを持ってしても、Iペースより0.2秒速いだけなのだ。

停止状態からの加速は極めて一定的でリニア。何か強力な力で、しっかりとしたパフォーマンスシートに身体を押し付けられているかのようだ。ひとつ気になるところといえば、2.2tの車重のせいもあって、フロントタイヤが瞬間的に滑り出しそうになるところだろう。

2016年にわれわれがテストしたテスラモデルS P90Dと比較すると、モデルSの方が、0-96km/h加速、48km-112km/hともにIペースより速い。しかし、パフォーマンスのバランスでいうと、Iペースの方が優れているように感じられる。確かに、静止状態からの加速は、息を呑むほどのものではない反面、高速道路での速度域でも、鋭い加速感はモデルSほど緩やかにはならない。ジャガーは意図的にテスラよりもギア比を長めに設定することで、0-96km/h加速のような瞬発力だけでなく、実際の走行シーンに合わせて、バランスよく設定しているように思う。

パワートレインのレスポンスの良さは魅力的で、違和感のないもの。アクセルペダルの操作への反応が機敏だから、交通量の多い都市部でもとても運転しやすく感じるはず。インターチェンジでのカーブを抜けて、高速道路へ合流する際の加速も、一瞬で終わる。

残念な点は、カテゴリーとしては高級車の部類に入るクルマとして、EVに期待するほどの静寂性が得られていないということ。112km/hでの走行時、車内の音量は66dBで、モデルSよりも1dBほどうるさかった。これは20インチのアルミホイールによる影響が大きいと思われる。また、アルミニウム製のボディが車内に音を伝えやすいということも理由だろう。

ブレーキペダルを目一杯踏む緊急ブレーキでは、112km/hから完全に停止するまでに要した距離は乾燥路面で46.7m。より重くパワフルなモデルSの場合は、湿った路面ではあったが、51.7mを要している。

テストコース

電子制御のスタビリティコントロールの制御がきつくなければ、Iペースの賢いパッケージングと電動パワートレインのもつポテンシャルを発揮できる場面。垂直方向の動きがきつくなる、下り坂の続くミルブックヒルのルートは、スタビリティコントロールをオフにした方が走りやすそうに思えたが、局所的にパワーロスを生じさせる場面があった。

この区間を過ぎれば、シャシーのバランスと俊敏性の秀逸さが光る。テスラ・モデルSとは比べ物にならないほど、意図した通りに進路を変えていくことができる。慣性によって荷重は別方向に残っているのに、タイヤは狙った進路を捉えていける印象すらある。245/50というサイズのタイヤが、有り余るほどではないにしろ、充分なグリップを提供してくれる。

丘の上のT6のコーナーでは、Iペースのリアタイヤが瞬間的に外側へスライドする感覚があったが、危険を感じる様な挙動ではなかった。うねりのあるT1のコーナーでの揺れは、詰めの甘いクルマほど酷くはなかった。エアサスペンションとEPSが和らげているのだろう。T5の大きくくびれのある区間では、IペースのESC(スタビリティコントロール)ステムでは処理できておらず、立ち上がりでのパワー不足も気になった。

発進加速

テストトラック条件:ドライ/気温21℃
0-402m発進加速:13.1秒(到達速度:173.9km/h)
0-1000m発進加速:−秒(到達速度:−km/h)

テスラ・モデルS P90D(2016)
テストトラック条件:湿潤路面/気温12℃
0-402m発進加速:12.0秒(到達速度:181.5km/h)
0-1000m発進加速:22.6秒(到達速度:223.7km/h)

制動距離


テスト条件:ドライ/気温21℃
97-0km/h制動時間:2.78秒


テスラ・モデルS P90D(2016)
テスト条件:湿潤路面/気温12℃

 

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