ロードテスト BMW M5 ★★★★★★★★★☆

公開 : 2018.09.30 11:40  更新 : 2018.10.01 15:25

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 走り ▶ 使い勝手 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

乗り味 ★★★★★★★★★★

ステアリングやダンパー、エンジンとギアボックス、4WDシステムやスタビリティコントロールにはさまざまな作動モードが用意されており、把握するための手間暇を要する。ややこしいセッティングが嫌いだというユーザー向けのスーパーサルーンではない。しかし、半信半疑で行うのだとしても、さまざまなボタン操作はこのクルマを真に楽しむために必要な通過儀礼だ。そうすれば、M5はあなたのシニカルな態度をたちまち解きほぐしてくれるはずだ。

BMW Mモデルの通例では、多くのシステムでコンフォート/スポーツ/スポーツ+の各モードが選択できるが、新型M5ではさらに4WD/4WDスポーツ/2WDの各モードがドライブトレーンに設定された。2WDモードでは、スタビリティコントロールを完全にカットできる。それでも、望めばそのハンドリングを楽しみつつも四輪駆動の安心感を享受できるのだ。さらに、ドリフト志向の後輪駆動セッティングと、サスペンションやステアリングのコンフォートモードを組み合わせることも可能なのが、ライバルのE63 Sとは異なる。セッティングのコンビネーションにおける制限はほとんどないといっていい。

しかし、空前絶後の運動性能とほぼ前例のないほど柔軟性のあるハンドリングを兼ね備えたスーパーサルーンを生み出してきたBMWの匠の技は、ステアリングホイール上のM1/M2と記されたボタンにプリセットされている。これは、多くのボタン操作とセッティングの試行錯誤によるフラストレーションを解消してくれるものだ。しなやかで安心感のあるスムースな高級サルーンから、B級道路向きの俊敏でタイトなコントロールや安定感、人馬一体感を持つマシンへ変貌させるには、赤いボタンを親指でひと撫でするだけでいい。

このM5を、快速サルーンが居並ぶ中で特別な存在たらしめているのは、ずば抜けた敏捷性やコーナリングバランス、ハンドリングのアジャスト性だ。このサイズのクルマではなかなか望み得ないだけでなく、4WDによって鈍りがちなシャシーのバランスとデリカシーを、このMモデルは備えている。4WDスポーツ・モードを選べば、DSCに介入してほしくない場合にも、M xドライブがスタビリティコントロールのような仕事をみごとにこなす。

一般的なスーパーサルーンなら、リラックスしてツーリングするときにはもっと乗り心地が穏やかだ、という批判はごもっとも。ステアリングが必要以上に重く、フィールが不自然で常に予測が効くものではないという指摘もあるかもしれない。しかし、どちらの短所もセッティング次第で軽減でき、この運動性能の驚嘆すべき懐の広さの前では大した問題とは思えない。

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