ロードテスト アストン マーティンDBSスーパーレジェーラ ★★★★★★★★★★

公開 : 2018.12.16 10:10  更新 : 2018.12.25 16:58

 

意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 走り ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★★★★

DBSの場合、スポーツカーではなくスーパー・グランドツアラーなのだから、電子制御のローンチコントロールは、さほど重要な機能ではない。しかし、ゲイドンのエンジニアは、完璧なスタートを切れる様に、トランスミッションに特別なプログラムを搭載した。エンジンは最も効果的にトルクが発生する回転数を保ち、数秒間だけブレーキがかかったままの状態をつくれるように設定してある。

この機能を有効にするには、複数のボタンを押したり、複雑なシフトパドルの操作は必要ない。しかも極めて有能で、生産車として最もパワフルなアストン マーティンに期待するような、テールスライドも発生することなく、ロケットスタートを決めてくれる。

それでも、乾燥した路面でフルスロットルの発進を成功させても、0-48km/h加速では、今年のはじめにわれわれがテストしたアストン マーティン・ヴァンテージに、0.1秒及ばない。0-96km/h加速では、ひと回り小さく軽量で安価な、DB11より0.1秒速い3.7秒。そこからDBSは期待通りの加速をはじめ、161kmへの到達時間はヴァンテージよりも1秒も短い。さらに0-241km/h加速は、にわかには信じがたいが、9秒も短縮している。

これは、スーパー・グランドツアラーという基準では、極めて俊足な数字だといえる。もしゲイドンが主張する0-100km/h加速を3.4秒でこなす必要がなければ、フロントエンジンで700ps以上のパフォーマンスは不要だったかもしれない。一方で、フェラーリ812スーパーファストの0-161km/h加速は、このDBSより1秒も短い。その突出したパフォーマンスを実現するために、いくつかの点で犠牲も生まれているとは、熱心な読者には説明不要だろう。

実際の世界で、V12エンジンのパフォーマンスを知るには、中間加速の数字がわかりやすい。この部分を比較してみると、812スーパーファストよりDBSの方がわずかながら有利だといえる。4足で48km/hから112km/hへの加速と、5速で64km/hから128km/hへの加速、7速で80km/hから144km/hの加速では、DBSの方が鋭いのだ。車重が重く、レシオの高いギアでオーバードライブされているのにも関わらず。

つまり、溢れんばかりのマッスルカー的な筋力は、実用的でもあるということ。高速道路や郊外の道で、ギアを入れっぱなしにしていても、思い通りの鋭い加速を披露してくれるということでもある。ただし、残念ながらトランスミッションは常にベストな状態で、スムーズにパフォーマンスを引き出してくれるわけではない。時にオートマティックモードでは、変速ムラが生じ、変速ショックも大きくなることがある。

しかし、自らシフトチェンジをすれば、大きく息を吸って意のままにパワーを生み出すエンジンと相まって、さも当然のように驚くようなスピードへと導いてくれる。スーパー・グランドツアラーとしてもピッタリの正確だと思うし、これほどまでのパフォーマンスを備えているモデルは、ほかにはない。

テストコース:ドライコンディション

DBSスーパーレジェーラにとっては、手強いコースではある。なにしろ725psのパワーと1910kgの車重、そして特注のピレリPゼロ・タイヤとはいえ、駆動するのは2輪のみ。ドライバーを助けてくれるトラクションコントロールの類をオフの状態で、強烈なパワーを解き放てば、たとえ乾燥した路面であっても、ドライビングの体験は恐怖を伴う可能性もある。

しかしDBSの場合は、その様な心配はほとんどいらない。一昔前の、大きくソフトで、テールスライド天国だったアストン マーティンとは違う。力強くグリップし、かつてのヴァンキッシュよりも高速で周回することができる。しかしグリップの限界領域を超えた付近でのクルマの挙動変化は、もう少し予見のつくものであって欲しいし、ライバルと比べた時、シャシーのバランスや俊敏性では及ばないと感じたことも事実だ。

カーボンセラミック・ブレーキは、フェードしないというわけではないが、T1のコーナーであっても強力な制動力を発揮。高速コーナーのT4を抜けるときでもステアリングの正確さは、自信を与えてくれた。

アストン マーティンDBSスーパーレジェーラ:1分11.8秒
フェラーリ812スーパーファスト:1分9.3秒

テストコース:ウェットコンディション

ピレリタイヤは濡れたハンドリングコースに手を焼いた印象だったが、リアタイヤのグリップ抜けは漸進的なもの。低速コーナーでの変速レスポンスは、トラクションを稼いで最速で脱出するには、やや遅く感じられた。

アストン マーティンDBSスーパーレジェーラ:1分15.4秒
フェラーリ812スーパーファスト:1分8.3秒

発進加速

アストン マーティンDBSスーパーレジェーラ
テストトラック条件:乾燥/気温17℃
0-402m発進加速:11.6秒(到達速度:210.5km/h)
0-1000m発進加速:20.5秒(到達速度:268.4km/h)
48km/h-112km/h加速/4速:4.1秒

フェラーリ812スーパーファスト(2018)
テストトラック条件:乾燥/気温30℃
0-402m発進加速:10.9秒(到達速度:221.9km/h)
0-1000m発進加速:19.3秒(到達速度:283.5km/h)
48km/h-112km/h加速/4速:4.3秒

制動距離

アストン マーティンDBSスーパーレジェーラ
テスト条件:乾燥/気温17℃
97-0km/h制動時間:2.54秒

フェラーリ812スーパーファスト(2018)
テスト条件:乾燥/気温30℃

 

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