ロードテスト BMW 8シリーズ・クーペ ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2019.02.03 17:40  更新 : 2019.02.05 17:56

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★★☆☆

アグレッシブなルックスを裏付けするような、圧倒的パフォーマンスをこの840dに期待したなら、少なからず失望を覚えることになるだろう。テスト車の0-97km/hの公称タイムは4.9秒だが、それにはコンマ1秒届かなかった。2017年にテストしたポルシェ・パナメーラ・ディーゼルからは、ほぼ1秒落ちだ。2993cc直6ターボディーゼルの出力は319psに過ぎず、背中をシートへ叩きつけるほどの加速Gは味わえない。これはM850iでも気がかりな点で、0-100km/hが3.7秒というのはスポーツカーとしても上々のタイムだが、正真正銘のスーパースポーツの域には達していない。

しかし、他のあらゆる点では、このエンジンは賞賛に値する。特に、アストンマーティンやマセラティ、ベントレーのように至極の味わい深さとエキゾティックさを持つラグジュアリーGTではなく、活気ある長距離クルーザーとしてみれば、だ。そして、タイムこそ激烈に速いとはいえないとしても、現実的な状況下での走りは元気なものに感じられる。69.3kg-mのピークトルクの発生範囲は1750〜2250rpmと狭いが、スペック表が示すほど束の間だとは思えない。オルガン式ペダルを踏み込めば、4500rpm付近でも50kg-m以上のトルクが引き出されるのだ。

その結果として、この8シリーズのエントリーモデルが秘めたGT性能には困惑を覚えるが、エンジンのフレキシビリティが特に明らかになるのは、絹のようにスムースなATのシフトアップに代えて、ステアリングホイールに設置された短く幅広いシフトパドルを使った時だ。6速では、64-97km/hのタイムが600psを誇るM5と大差ないのである。ただし、マニュアルモードでも5500rpm以上は回らない。

とはいえ、BMWの最新直6ディーゼルを未経験なら、このレスポンスと精緻さには嬉しい喜びを覚えるだろう。エレガントなクーペにディーゼルエンジンを積んで、違和感なく仕立てられるメーカーは多くないし、パフォーマンスと経済性のバランスが巧みなものはさらに少ない。超高性能ハッチバック並みのパフォーマンスと、テストを通じて14km/ℓという燃費を両立できるとなれば、車種にかかわらず上々だといえるし、ましてや四輪のスーパーヨットともいうべきディメンションのクルマであれば言わずもがなだ。

それゆえ、フラッグシップGTにとってディーゼルが十分に効果的か、またそれに必要なレベルの洗練性を備えているのかを問われるならば、答えはイエス。しかしながら、この手のクルマに求められるリッチさやキャラクターがあるかというならば、話は違ってくる。レクサスLC500のV8自然吸気や巧みな電動アシストを加えたメルセデスAMG E53の直6、また贅沢なS560クーペのV8ツインターボといったガソリンユニットとは違う。結局、それらは合理的ではない買い物だ。多くのユーザーにとって、客観的な要素で雁字搦めになっているものは、いくらよくできていても、それほど甘美と感じられないのである。

テストコース

ミルブルックのヒルルートは、8シリーズのウェイトとサイズを小さく感じさせる能力を明らかにする。大型モデルは、このツイスティでアンジュレーションのきついコースに苦戦しがちだが、このクルマの金属スプリングを用いたサスペンションは、長いボディを水平に保ち、ブリヂストン・ポテンザS007の性能を最大限引き出す。

しかし、シャシーやタイヤを信じることが、ドライバーは求められる。というのも、ステアリング越しに伝わるロードフィールは乏しく、左右いずれも、センターから切り込んだもっとも重要な舵角の部分が頑ななまでに無感覚のままなのだ。しばしば前輪もドライブする駆動系もあって、速く、俊敏で(それも、タイトなヘアピンで四輪操舵が利いたときには群を抜いて)、しかも安定している。ところが、運転していると奇妙なほど緩慢に感じられる。

ボディのロールは、見かけによらない速さで駆け抜けるT1とT2の切り返しでも最小限に抑えられる。このBMWの長いノーズは、選んだラインをピタリと捉え続ける。

下り坂やワイドなヘアピンでの上下動のコントロールは、この手の大型車の典型といったところだ。フロントアクスルは、時として穏やかなアンダーステアを生ずる。

トルクの豊かなターボディーゼルエンジンは、上り坂でも840dの1901kgの車体を苦もなく引き上げるように見え、現実的な状況での強力なパフォーマンスを示唆する。

発進加速

テストトラック条件:湿潤路面/気温10℃
0-402m発進加速:13.7秒(到達速度:165.6km/h)
0-1000m発進加速:25.0秒(到達速度:213.7km/h)

アウディA7スポーツバック 50TDI スポーツクワトロ(2018年)
テストトラック条件:乾燥路面/気温24℃
0-402m発進加速:14.3秒(到達速度:158.0km/h)
0-1000m発進加速:26.1秒(到達速度:204.2km/h)

制動距離

テスト条件:湿潤路面/気温10℃
97-0km/h制動時間:3.05秒

アウディA7スポーツバック 50TDI スポーツクワトロ(2018年)
テスト条件:乾燥路面/気温24℃

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