AUTOCARアワード2019予選 真のアイコン選手権 決めるのはあなた(中編)

公開 : 2019.03.16 11:50  更新 : 2019.06.03 08:54

フォード・マスタング

75億人もが住むこの惑星をわれわれは地球と呼ぶが、そのなかでクルマ好きと自認しているのはごく少数に過ぎない。それでも、例え自動車文化などには縁遠く、クルマとは単にひとつの場所から、他の場所へと移動する道具に過ぎないと考えるひとびとにとってさえ、他のどんな名前よりも興奮を呼び起こすモデルがあるとすれば、それはフォード・マスタングで間違いない。

55年前、ミシガン州ディアボーンの工場から最初の初代マスタングが送り出された瞬間から、このポニーカーは単に自動車世界におけるアイコンへの道を歩み始めただけでなく、広い意味で西洋文化と密接に絡み合ってきたのだ。

半世紀にわたって歌に歌われ、ハリウッドスターとともに、銀幕をも賑わせてきた。時には、マスタングが主役級の活躍を見せることもあり、映画「ブリット」でスティーブ・マックイーンとともにサンフランシスコの街を駆け抜けた1968年式GT 390は、その代表格と言えるだろう。

マスタングのアイコンとしての地位は、その販売台数という揺るぎない数字によっても示されている。フォードが発売初年度に計画した販売台数は、10万台以下というものだったが、18か月後、その生産台数は100万台以上に達していた。2018年末まで時間を早送りしてみれば、さらに1000万台以上がフォードの米国工場から出荷されている。別の見方をすれば、マスタングはポルシェ911(同じく長寿を誇るアイコニックなスポーツカーだ)が1台売れている間に、10台が新たなオーナーの下へと嫁いでいるのだ。


確かに、マスタングの歴史が常に順調だったわけではない。初代はその生産期間中に、オリジナルの時代を超越したプロポーションを大きく変化させており、続く2代目と3代目モデルは、ひとびとから忘れ去られても仕方のない出来だった。しかし、こうした苦難の時代を越えて、マスタングは偉大なモデルとしていまも存続しているのだ。

現行モデルが纏うスタイリングも、マスタングをアイコンと呼ぶ大きな理由であり、さらに、6代目にして初めて右ハンドル仕様を選ぶことができるようになっている。だが、何を置いてもマスタングをアイコンの地位へと押し上げているものは、そのエンジンルームに収まるV8エンジンだ。

もちろん、現在でもV8を積んだモデルは数多く存在するが、厳しくなる一方の排ガス規制により、その多くがターボ化され、ダウンサイジングが進められている一方で、マスタングは依然として大排気量自然吸気を守っている非常に希少な存在であり、他に新車で購入可能な自然吸気V8モデルといえばレクサスLCしか思い付かない。

つまり、いまやフォード・マスタングとは古代の恐竜のようなものであり、ますますその数を減らしていく絶命危惧種のような存在だ。だが、依然として古典的スポーツカーの代表格とも言えるモデルだからこそ、1票を投じる価値がある。信じて欲しい。マスタングを失ってからでは遅いのだ。
(サイモン・デービス)

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