ゴーン元日産会長の保釈劇 仏メディアの報道は 日本の視点、違和感も

公開 : 2019.03.11 18:10  更新 : 2021.10.09 23:31

見るべきところは、そこではない

不気味なのは、この不条理劇には黒子が多数いたことだ。

拘置所の玄関から軽自動車まで、変装したゴーン前会長を取り囲んで送り出した捜査員たちは、ガードの役目を果たしていたというより、取り逃がさざるを得ない獲物に今一度、睨みを効かせていたように見えた。

はっきりいって、メンチを切りに来たチン〇ラ、あるいは映画などで悪役として描かれた、戦前の特高警察のようだった。

扮装姿のゴーン元会長という主役と、その小道具ばかりに注目して、周囲にいた捜査員らが黒子のように無視すべきものと映ってしまうのは、いかにも日本の観劇的視点であり、盲点といえる。

もうひとつおもしろい皮肉は、ゴーン前会長を乗せて走り去った作業車の軽のドライバーは、知り合いの建築会社社長に頼まれただけで、この社長も高野弁護士に頼まれたとのことで、ゴーン前会長を運ぶなどという仕事内容は、知らなかったことだ。

恐らく今後、検察が争点としてくる容疑は、ゴーン前会長が指示した一連のお金の流れが、中東を経由したマネーロンダリングにあたるか否かという点だろう。

だが、マスコミにバレないよう高野弁護士が計画した扮装劇も、「まるで本筋に関与しないものを1枚、挟む」という点で、ロンダリング的手法ではないか。

その試みが検察の「黒子たち」によって、まんまと潰えてしまったのだとしたら、今回の扮装劇はどちらかにポイントが入ったかというより、引き分けだったというのが真相ではないか。

記事に関わった人々

  • 南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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