ベントレー・フライング・スパー

公開 : 2013.05.15 18:29　　更新 : 2017.05.29 19:03

■どんなクルマ？

ベントレーの最新のラグジュアリー・サルーン、フライング・スパーだ。既にネーミングがコンティネンタル・フライング・スパーでないことに注意してほしい。ベントレーは、フライング・スパーと、コンティネンタル・クーペ/コンバーチブルとの間に明確なラインを引いたのだ。特にビジュアルでは、そのノーズ・デザインが異なる。スパーは外側のライトが大きく、ロワ・グリルにはホリゾンタル・ストライプが入れられている。更に、リア・ビューは、爆撃戦闘機ブリストル・ブレナムを思い起こさえるようなちょっと落ち込んだマッシブなスタイルとなっている。

この新しいスパーは、昨年デビューしたコンティネンタル同様、すべて新しいプラットフォームの上に再設計されたモデルだ。5.3mのサルーンは、スティール・モノコック製だが、フロントにアルミニウム・パネルが、リアにプラスティック・パネルが使用され50kgの軽量化が施された他、ボディ剛性は4%向上している。また、それまでの6速オートマティックに代わって8速オートマティック・ギアボックスが装備されるようになった。

エンジンは、スパーではW12のみが用意され、V8は搭載されない。そのパワーは616bhpで、トップスピードは320km/h、0-96km/h加速は4.3秒。燃費は6.8km/ℓで、CO2排出量は343g/kmとなる。

インテリアは、2、3のパーツが持ち越されているが、残りは一新されている。もちろん、そこには本革が多く使われている。

重要な変更はサスペンションにある。旧モデルは、そのメイン市場である中国(フライング・スパーの半数以上が販売される)と北米市場をターゲットとしていたため、とりわけ静かな乗り心地というわけではなかった。しかし、今回はスプイリングをフロント10%、リア13%、アンチロールバーも13%、15%、ブッシュも25%柔らかくし、高いアスペクト・レシオを持つ19インチ・タイヤと組み合わせられることになった。

■どんな感じ？

乗った瞬間から、新しいフライング・スパーが旧モデルよりも熟成されたことが解る。街の周りでは、穏やかでソフトで、そして静かな乗り心地だ。更に、まわりが騒がしい状況では、タコメーターを見なければ、クルマが走っているかどうかすらわからないぐらいだ。

ドライブは、調整がしやすいスロットル・ペダルとブレーキによって非常に容易。街中を走るには何の心配もなく、シンプルに運転ができる。

高速道路でもそれは変わりない。W12エンジンは静かなままで、騒音もよく抑えられている。また、ギアボックスの動きも良い。ステアリングも非常に安定している。今回は英国のモーターウェイの制限速度の中でしか走れなかったが、3ケタのマイル(160km/h以上)の速度でも、おそらくその印象は変わることはないだろう。

ベントレーは320km/hを出すことができるクルマを設計することが重要だという。確かに顧客はそんな速度を出さないかもしれない。しかし、そこまでの領域に達する必要がなければ、基本的な設計が変わっていたという。もしフライング・スパーに不利な点があるとすれば、ラグジュアリー・サルーンとしての役割と共に、速いクルマであるという役割も持たされていることにあるのかもしれない。

ロールス・ロイス・ゴーストと較べると、路面への食いつきは良い。ただし、ストレートで滑らかな道以外では、1976mmの全幅のボディはかなり大きな動きをする。以前は、この動きを封じるためにサスペンションを堅くしていたのだが、今回のセッティングは却ってフリーにさせるという方法をとったようだ。ひょっとしたら、一部の顧客にはフリーすぎると思われるかもしれないぐらいだ。

スパーのダンパーは4つのセッティングを選ぶことができる。しかし、英国の道では、スポーツから1つ下のセッティングが最高の妥協点のように感じられた。

■「買い」か？

フライング・スパーは、その透明な空気感が魅力だ。しかもアウディやBMWには12気筒モデルはないし、ロールス・ロイス・ゴーストやアストン・マーティン・ラピードは£170,000(2,650万円)とスパーより高価だ。レンジローバーはコンペティティブなモデルではあるが、特に中国人の興味はサルーンにある。しかも長ければ喜ばれるのだ。そういった意味ではこのフライング・スパーはぴったりな1台であろう。

(マット・プライヤー)