VWの第3章の幕開け 初試乗 フォルクスワーゲンID 3プロトタイプ 58kWh

公開 : 2019.07.08 10:10

シティカーとして理想的なドライバビリティ

同様にID 3の方法以外で、量産車のエクステリアデザインへ影響を与えずに、ドライバーへ情報を表示するディスプレイの方式を、想像することもできなかった。コスト的な事も考えると、このシステムが現時点では世界最良の拡張現実を用いたヘッドアップ・ディスプレイになるのではないかと思う。代替できるようなシステムが現れない限り、いずれ当然のものとなるだろう。

ID 3の走りは静かで活発。操作に対する反応も良く、都市部でも運転がしやすい。これはわれわれが多くのEVに対して抱くインプレッションと同じ特徴でもある。モーターの最高出力は203ps、最大トルクは31.6kg-mで、加速力に不満はく、低速域から元気に立ち上がる。むしろ余りにトルクフルでモーターのレスポンスが鋭いため、ハーフスロットル以上アクセルを踏み込む場面は殆どなかった。

そのような活発な性格を持ちながら、都市部で実際に走行させてみると、リラックスして落ち着いた走りに浸ることの方が多い。ID 3の持つ雰囲気に調和しているように思う。

ステアリングの操舵感は軽く、レシオもそれほどゆっくりしたものではない。しかし、フロントタイヤの切れ角が大きいこともあり、ロックトゥロックは3.5回転とかなり回すことになる。小回りも効くから、込み入った道路や駐車をする際には便利だろう。実際、駐車区画からクルマを出す際では、切り返しをする必要はなかった。Uターンや狭いT字路を曲がる場面でも同様。ID 3はシティカーとして、理想的な操縦性を持っているといえるだろう。

タウンスピードでの機敏性も良い。グリップ力も高く横方向のボディコントロール性にも優れている。必要ならば、かなり素早くレーンチェンジや進行方向を変えることも造作ない。BMW i3と比較して荒れた路面や継ぎ目などでの脚さばきは及ばないようだが、都市交通の流れの中では充分に快適。フォルクスワーゲンらしい、あらゆる場面でしっかり抑制の効いた自然な乗り心地を提供してくれる。おかげでドライバビリティの良さが一層引き立ってくる。

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