3.0L V6ディーゼル+ハイブリッド アウディS4 試乗 346ps 広がるSの変化

公開 : 2019.08.11 09:50

S4もついにガソリンエンジンから惜別。新しいS4には、V6のTDIディーゼルエンジンにマイルドハイブリッドが組み合わされます。ディーゼル・ハイパフォーマンス・サルーンという新しい魅力を評価しました。

V6ディーゼルターボ+マイルドハイブリッド

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

アウディS4が、343psを発生する4.2LのV8エンジンを搭載していた時代は、それほど昔ではない。アウディのSモデル群が魅力的なV8エンジンを搭載していた頃を、いま時代錯誤だったと強く感じることはないと思う。少し前のC6世代のS6には、435psを発生するランボルギーニ譲りの5.2LV型10気筒エンジンをフロントに搭載していた。時代の変化は早いものだ。

その魅力的だったエンジンたちは、アウディのSのモデルの中にはほとんど残っていない。Sからさらに強化されたRSモデルでさえ、10気筒エンジンを搭載しているクルマはRS8くらいないようだ。かつて自然吸気のV型8気筒エンジンで風を切っていたRS4やRS5でさえ、性格を変えてしまった。

しかしそれが世界の流れではある。意識の変化にあわせて優先順位も変化し、クルマはそれに適応していく必要がある。新しいアウディS4に、先代の3.0LV型6気筒ガソリン・ターボエンジンにかわって、3.0LのV型6気筒ディーゼルエンジンにマイルド・ハイブリッドが組み合わされた理由でもある。

この流れは、アウディがほかのSモデルへも与えているものと同じ。新しいS6とS7にもディーゼルエンジンが搭載された。最近発表されたSQ8には、4.0LのV型8気筒エンジンが搭載されているが、燃料は軽油。まもなく登場するSQ7にも搭載されることだろう。それらのクルマにも、マイルド・ハイブリッドシステムが搭載されている。欧州市場では今後、S8が唯一のガソリンエンジンを搭載するSモデルとなるだろう。

アウディのSで進むパワープラントの変化

2015年に世間を賑わせたディーゼルエンジンの排出ガス偽造問題、いわゆるディーゼルゲートに伴うイメージの低下を考えると、アウディがミドルサイズのハイパフォーマンス・モデルにくだした決定には、疑問を抱いてしまう。

アウディのエンジニアから聞いた話によると、このディーゼル化の流れは、初代SQ5にディーゼルエンジンが搭載された際の意向が強いという。まだ当時は強い需要があったのだ。顧客は優れた走行性能と経済性との組み合わせを好むという理由で、ディーゼルエンジンを幅広いSモデルへと搭載することが決定されたのだ。

また、現在の排出ガスの規制強化についても、理由として考える必要はある。RS4やRS5に搭載されるエンジンの排気量が、徐々に小さくなっていることも見逃せない。恐らくディーゼルエンジンは、身近なハイパフォーマンスモデルを実現する手段でもあるのだろう。

とはいえ、使用する燃料が変わっても、S4が生み出す力がたくましいことは事実。3.0LのV6ディーゼルエンジンの最高出力は346psで、最大トルクは71.2kg-m。最大トルクの発生回転数域は意外と狭く、2500-3100rpmとなっている。ちなみに、メルセデス-AMG C63 Sクーペが搭載する4.0LのV8ガソリン・ツインターボ・ユニットが発生する最大トルクとほぼ同等となる。

駆動方式は、アウディのハイパフォーマンス・モデルらしく、4輪駆動。トランスミッションは8速ATで、セルフロック・ディファレンシャルによって、最大で85%のパワーを後輪へと伝えることが可能となっている。0-100km/h加速は4.8秒で、4輪駆動状態での鋭い加速は、このクルマの最も楽しめる側面でもある。

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