2019年版 ホンダNSXに試乗 発表から3年 ハイブリッド581psはそのまま

公開 : 2019.09.13 09:50

ハイブリッドシステムの出力もそのまま

3モーターとV6ツインターボによるハイブリッド・パワートレインが、581psを発生するという点は、一切変更を受けていない。予想外にシンプルで好感の持てる、意外とオールドスクールなエンジンだ。しなやかで静かながら、ややダイレクト感に欠けるから、スーパーカーに期待するようなレスポンスとサウンドを楽しむには、スポーツ+かトラック(サーキット)モードを選択する必要がある。

しかし、電気モーターのトルク支援があっても、近年のターボ過給されるハイパフォーマンスモデルが披露するような、即時的で首を打たれるような加速感ではない。初代NSXと同様に、本当に速く走らせるにはエンジンの回転数を高める必要がある。レブカウンターが5000rpmを超えてくると、NSXらしさが表れてくる。高い段数を選びたがるツンクラッチATをマニュアルモードに切り替えて、エンジンの回転数を保てば、アドレナリンを盛大に分泌するような楽しさを味わえる。

ホンダNSX
ホンダNSX

ハンドリングの変化を確かめるためには、サーキットでの走行が必要となるが、一般道でもそのメリットは感じ取ることができた。発表当初は、ボディが幅広く重たく感じられ、スーパーカー基準としてはどこか柔らかすぎる印象があった。2019年版も基本は同じながら、サスペンションとステアリングの設定には、より鮮明な性格が与えられたようだ。

ステアリングホイールには操舵時の適した重さ与えられ、タイヤからの触感が前面に伝わってくるようになった。クルマの重さもさほど気にならなくなり、バランスが良くなったと感じられる。おそらく横方向のボディの動きが引き締められ、フラットな姿勢を保てるようになったためだろう。本質的なドライビングの体験に大きな変化はないとはいえ、わずかだが、ターンイン時の食いつきも良くなったように感じられる。

ニッチ市場のニッチな嗜好を持つひとへ

NSXは充分に速く走らせられるし、ドライビングも楽しめる。しかし、このボディサイズと車重が現代のフェラーリマクラーレンのテリトリーへと踏み込む邪魔をしているし、ホンダ自慢のハイブリッド・システムも、ドライバーへの訴求力を加算してくれていない。一部のハイブリッド・スーパーカーなら可能なEVモード、ゼロ・エミッション・ドライビングができない点も残念ではある。

そう考えるとNSXにおけるハイブリッド化は、コストがかかっていながら、スーパーカーとして得られた見返りは少ないように思える。結果として、様々な意見もあるとはいえ、従来的な内燃機関のスーパーカーが良い選択に見えてしまうかもしれない。

ホンダNSX
ホンダNSX

だが「従来的な方が良い」という考え方より、「珍しく変わった選択肢で、社会的な批判も少ない」という考え方を優先するのなら、NSXは選択肢の最上位に入ってくるべきクルマだ。エキゾチックなライバルモデルがひけらかす、富のシンボルやステータス、ドラマチックなスリルといったものとは別の、控えめで技術的な訴求力を好むという嗜好を持ったドライバーとでもいえようか。実際に得られるものも、従来の理想像とは少し異なるわけだが。

ホンダNSXは、滑らかで正確で、一般道でも運転しやすいスーパーカーだということに変わりはない。エキサイティングさは薄いものの、それは初代NSXが備えていたダイナミクス性能の特徴でもある。だとしても、非常にニッチな市場でのニッチなドライバーを、今の品質で今の時代に見つけることは、少々難しいと感じてしまうのだった。

ホンダNSXのスペック

価格:17万ポンド(2210万円)
全長:4487mm
全幅:1939mm
全高:1204mm
最高速度:307km/h
0-100km/h加速:3.3秒
燃費:9.3km/L(WLTP複合)
CO2排出量:242g/km(WLTP複合)
乾燥重量:1759kg
パワートレイン:V型6気筒3493ccツインターボ+3モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:581ps/6500−7500rpm
最大トルク:65.6kg-m/2000rpm
ギアボックス:9速ツインクラッチ・オートマティック

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

ホンダの人気画像