ジェリー・マクガバン 新型ディフェンダーのデザイナーにインタビュー 前編

公開 : 2019.11.02 18:50

新型ディフェンダーのデザイン責任者を務めたゲリー・マクガバンにインタビューを行いました。DC10やLR1といったコンセプトモデルが新型ディフェンダーに与えた影響を語りつつ、つねに次なるプロジェクトを求める彼の眼は、すでにEV化時代に向けられているようです。

「遠い昔の出来事」

text:Steve Cropley(スティーブ・クロプリー)

ジェリー・マクガバンは現実的な男だ。

ランドローバーでデザイン責任者を務める彼の明るく広々としたゲイドンのオフィスを訪れたのは、いかにして彼と彼のチームが、1948年に誕生したこのブランドのアイコンとでもいうべきモデルの新型を創り出したのかについて、数多くの感動的な秘話を聞きたいと思っていたからだ。

マクガバンは自らを細部を仕上げる編集者のような存在だと言う。
マクガバンは自らを細部を仕上げる編集者のような存在だと言う。

だが、マクガバンの最初のコメントは「すべては遠い昔の出来事です」というものでしかなかった。

もちろん、その言葉は真実であり、現代の自動車メーカーにおける常識のひとつが、市場におけるポジショニングや、基本的なサイズ、メカニカルレイアウトにスタイリングといったものは、量産が開始される5年ほど前にはすでに決まっているということであり、新型ディフェンダーも例外ではない。

このクルマは今月から予約が始まり、来年春にはデリバリーが開始されることになるが、公になることはなかったLR1と呼ばれる2015年の極秘コンセプトモデルからの影響といった、マクガバンが記憶している限りの開発秘話を是非聞きだしてみたいと思っていた。

今年62歳になるマクガバンだが、入念に準備を整えた実戦的なタフさを感じさせる。彼のジムでのお気に入りのエクササイズはボクシングであり、その二の腕の太さふつうのひとの太ももほどもある。

デザイントップの役割

「新型ディフェンダーがわたしの最高傑作かどうか、よく質問されます」と、うんざりとした様子を隠そうともせずに彼は言う。

「答えはノーです。わたしはプロのデザイナーであり、つねに次のプロジェクトを見据えています。ディフェンダーに続く大きな仕事だった新型レンジローバーのデザインをまさに終えたところです……」

新型ディフェンダーには伝統と現代性が同居している。
新型ディフェンダーには伝統と現代性が同居している。

幸い、単に男らしさを誇示するだけでなく、自らのデザイナーとしての歩みについても話してくれるようだ。

その道のりとは間違いなく、彼のデザインの実現性に疑問を投げかける上司やエンジニアとの闘いの歴史であったに違いないが、マクガバンは、例えSUVであっても、クルマのなかに美しさを見出すことのできる稀なセンスを備えた英国が誇る偉大なデザイントップのひとりだという、彼本来の姿を見せてくれた。

過去25年間(この間5年だけリンカーン・マーキュリーのデザイナーとして米国で働いていた)に登場したほとんどのランドローバーとレンジローバーのモデルに、明らかな彼の影響力を見て取ることができるが、マクガバンは他のデザイントップのように自らがペンを握っていた時代を懐かしむようなマネはしない。

「われわれには素晴らしいデザインチームがあります。わたしの役目は細かなデザインの修正です。みんなが帰宅したあとスタジオに残り、何が上手く行き、何が上手く行っていないのかを確認するのです」

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