【Mr.モナコと呼ばれた男】 F1グランプリの知られざる写真家 前編

公開 : 2019.12.14 07:50  更新 : 2020.12.08 10:56

捨てた入賞しなかったマシンのフィルム

低い光に照らされた究極の1枚は、1984年、エリオ・デ・アンジェリスがドライブするロータス95Tが、ヒューイットの手をかすめるように有名な丘を駆け抜けるシーンだろう。見事に捉えられたその瞬間は、彼の書斎を見下ろすように飾られている。

当時はフィルムだったから、シャッターを切るのは1チャンスのみ。大容量のメモリーカードなどない。「わたしのカメラ、ブロニカのフィルムは1ロール14コマでした。厳選した瞬間を狙って撮影しなければなりません。今のように連続してバンバンとシャッターは切れませんからね」

ミハエル・ヒューイットが撮影した写真のポジフィルム
ミハエル・ヒューイットが撮影した写真のポジフィルム

「フィルムも高価で、あまり撮影に熱くなり過ぎるわけにもきません。当時でも120や220フィルムは高嶺の花で、わたしは35mmを使っていました。バケツを持って会場を歩いて、冷蔵庫で保管していましたよ」

「(撮影したマシンが)上位3位までに入らなかったネガフィルムは、捨てていました。それは沢山」 彼はしばらく間をおいた。「なんて馬鹿なことをしたんでしょうね」

彼は特にレース全体の様子を撮影することが得意だったらしい。古い鉄道の駅やホテル、カジノが一緒に写る。クルマは情景の一部だ。「多くはサーキットの横に立っているだけでしたが、最高の背景を一緒に納めることは難題ではありませんでした。何しろモナコですから」

続きは後編にて。

 

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