【2019年もっとも運転の楽しいクルマを決定(3)】ダカールレーサーやケイマンも得点伸ばせず ドライバーズカー選手権2019

公開 : 2019.12.30 18:50

AUTOCAR恒例の今年ベストを決める、通称ハンドリングデイ。英国南西部の一般道とサーキットで、ドライバーの満足度一番を決定します。ノミネートの11台から、今年の英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)に選出されるのはどのモデルでしょう?

無骨なルックスなのにステアリングは繊細

text:Richard Lane(リチャード・レーン)ほか
photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)/Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)

 
恐ろしいほどのダカールレーサーへ乗り換えるまで、マツダロードスターで最高のドライビングを楽しんだ。真っ赤なボウラー・ブルドッグは、見た目は先代のランドローバーディフェンダーだが、まったくの別物。

ボディはラリー仕様の軽量パネルで構成され、強固なシャシーにレンジローバーSVR由来となる5.0L V8のスーパチャージャー・エンジンが積まれる。アクリル製のサイドウインドウ下からマフラーが顔を出すサイド排気。ランボルギーニウラカンの排気音をかき消すのに充分なノイズが轟く。

ボウラー・ブルドッグV8SC
ボウラー・ブルドッグV8SC

砂利や砂地などオフロードで戦うためのマシンだから、BBDC選手権で勝利を上げるとは考えにくい。しかし実際は、575psのシルエット・ディフェンダーのマシンは良く走る。

「どんな路面の凹凸でも乗り心地は良好です。長旅をしたいと思えるほどに。無骨なルックスなのに、ステアリングはとても繊細で正確なのにも驚かされます」 とマット・ソーンダース。

ブルドッグのハーネスを外し、ロールケージをくぐって出てくるドライバーは、車内は薄暗くても誰もが笑顔だ。ソーンダースの評価する内容が的を得ているから、気持は良く分かる。

「すっかり陶酔してしまいます。他にはない孤高の走りは、非常に素晴らしいですね」 一般道では予想外に正確性に優れるものだったが、サーキットではそうでもなかった。

911の走行性能と懐の広さは折り紙付き

驚くほど大きいボディロールに慣れてしまえば、安全にコーナリングする。しかし、ディファレンシャルがオフロード用に最適化されている点が大きいのだろう。当然のように、かなりのアンダーステア傾向だ。

マット・プライヤーのメモには、曲がりきれなくても、そのままエスケープゾーンの草地を速度を落とさず走り抜けられる、と記されていた。結果的にボウラー・ブルドッグV8SCは11位。だがノミネートするだけでも難しいBBDC選手権。宝くじのように、思いがけない楽しさを持ったクルマだった。

2019年英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権
2019年英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権

7名の審査員は、誰ともなしにクルマをフィルタリングし始める。ポルシェ911カレラSが持つ、走行性能の高さと懐の広さは折り紙付き。俊敏性や落ち着きといったものは、道を選ばず体感できる。

反面、最新の992型はやや重たく繊細さに少し欠く印象があることを考えると、サーキットでの操縦性の調整代や正確性には驚かされた。本領を発揮できる場所なら、古いポルシェ911のように振る舞う。

1963年以来続くポルシェの代名詞は、このBBDC選手権でも例を見ない記録を残してきた。992型となっても、すでに順位表の位置は大分上にいる。

「どこを走っても、家にいるかのように落ち着きを感じます」 とはジェームス・ディスデイルの言葉。もし911が今年優勝できないなら、打ち破ったクルマは居心地の悪い自宅、ということいえるのだろうか。

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