【アメリカ自動車ディーラーの本音】「EV/自動運転はどうでもいい」 本当に売りたいクルマは

公開 : 2020.01.03 11:50  更新 : 2021.10.09 23:55

自動運転、EV、といったキーワードを聞かない日はありません。いっぽうでテスラのお膝元であるアメリカの自動車ディーラーの本音は「どうでもいい」といったもののよう。かわりに売りたいクルマは……。

「EV/自動運転はどうでもいい」という本音

text:Kenji Momota(桃田健史)

EV市場を切り開いてきた、テスラ。自動運転では、グーグルなどのシリコンバレーのIT企業の動きが活発。

次世代の自動車産業では、アメリカの存在感は極めて大きい。ところが……。

EV市場を切り開いてきたテスラのSUV「モデルX」
EV市場を切り開いてきたテスラのSUV「モデルX

ユーザーにクルマを販売するアメリカの一般的なディーラーとしては、「EVだの、自動運転など、そんなことはウチの商売にとってたいしてプラスにならない。正直なところ、EVや自動運転など、どうでもいい」という声を数多く聞く。

こうした声は当然、自動車メーカー側にも伝わる。

メーカーとしては、中国に次ぐ世界第2位の自動車市場アメリカでの、こうした現実に対してどう対応するべきかを考えるという、悩ましい日々が続いている。

では、「EVや自動運転など、どうでもいい」として、ディーラーは何を優先した商売を求めているのか?

SUVとピックアップトラックは儲かる?!

それはもちろん、SUVとピックアップトラックだ。この分野は、ライトトラックと呼ばれる。

2019年11月までの累計販売台数で、ライトトラックは約1100万台に対して、乗用車は500万台を切っている。新車の3台にうち2台がライトトラックという計算になる。

2019年、アメリカでもっとも売れた日本車はトヨタRAV4だった。といっても総合4位。1〜3位はピックアップトラック。
2019年、アメリカでもっとも売れた日本車はトヨタRAV4だった。といっても総合4位。1〜3位はピックアップトラック。

アメリカの中でも、ライトトラックの普及率に差があり、テキサス州など中西部では高く、東海岸や西海岸の都市部では少し下がる。

では、どうしてライトトラックはアメリカで人気が高いのか?

まず、SUVについて、ユーザー目線での最大のメリットは生活から仕事までオールマイティに使える利便性だ。

ウォルマートなど大型スーパーで食料品や生活用品をまとめ買いしたり、子供を学校やサッカークラブに送り迎えしたり、キャンプに行ったりと、「なんにでも使えるからSUVがいい」というアメリカ人が多い。

90年代にジープチェロキーがブームになって以降、フォードエクスプローラー、GMシボレー・タホ、そしてトヨタ/レクサス日産/インフィニティホンダ/アキュラや欧州メーカーがこぞってSUVラインナップを拡充してきた。

また、ピックアップトラックについても、SUVよりも、さらに思い切った利便性を考える、ごく普通の人たちが、SUVとピックアップトラックの複数所有をする傾向が90年代から2000年代にかけて全米で広がっていった。

筆者(桃田健史)自身、そうした生活をアメリカで続けてきた。自身で所有するモノ以外に、米ビック3(現在のデトロイト3)、欧州メーカー、そして日系メーカー各社が次々と発表するライトトラックを全米各地で試乗してきた。

そうして人気が広がったライトトラックを、ディーラーは大歓迎である。

なぜならば、儲かるからだ。

記事に関わった人々

  • 桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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