【英国版中古車のすゝめ】 ロールス・ロイス・シルバースピリット&スパー

公開 : 2020.01.11 07:50  更新 : 2020.12.08 10:56

ミレニアムを飾った最後の純血ロールス・ロイスは、今後優れた価値を持つクラシックとして評価が高まる可能性は充分にあります。いまも変わらず放たれる、路上での圧倒的な存在感に浸るという選択も悪くはなさそうです。

やや過剰状態のシルバースピリットとシルバースパー

text:Malcom McKay(マルコム・マッケイ)
photo:James Mann (ジェームズ・マン)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)

 
年間1000台ほどが20年間に渡って製造された。ロールス・ロイス・シャドーと同様に、シルバースピリットとシルバースパーは、今の中古車市場ではやや過剰状態にある。

多くの手間と時間が掛けられ、新車時には驚くほど高価だったロールス・ロイスが、今なら信じられないほど安価に手に入る。中には状態の良いクルマもまだまだ残っている。

ロールス・ロイス・シルバースピリット/シルバースパー(1980〜2000年)
ロールス・ロイス・シルバースピリット/シルバースパー(1980〜2000年)

ロールス・ロイスはモデルチェンジではなく、同じモデを進化させることで、高い評判を維持してきた。シルバースピリットもシルバースパーも、基本的にはシャドーと同じプラットフォームを採用している。

ボディはより幅広く低くなり、空力向上も果たしているが、シルバースピリットの場合、全長は変わらない。エンジンは高圧縮比となり、給排気系に改良を受けている。2ドアのシルバーシャドーと同じリアサスペンションは、改良が施されたセミトレーリングアーム式となる。

全長はスパーの方が100mmほど長いが、伸ばされたぶんはリアシートの空間に充てがわれている。多くのエクステンド仕様も存在。159台のストレッチリムジンに104台のツーリングリムジン、49台のパークウォード・リムジンに1台の走行リムジンが作られた。

加えてコーチビルダーのフーパー社も、17台のリムジンを製造。24台のアップグレードも手掛けている。

すべての部品の製造・組み立て品質は素晴らしい。ダッシュボードに貼られたウォルナット材の木パネルは左右で綺麗に対象パターン。シートに用いられたベロア地は珍しいオプション。多くはレーザーシートだったが、ここでも細部に至るまで品質へのこだわりは見事だ。

優越感と優雅さを味わえる

1980年当時、シート座面の前後や上下の調整が電動化されていたのは珍しかった。ただし、背もたれのリクライニングは、初期のうちは手動式だった。

外気温計と走行時間の表示はデジタルディスプレイで、近代化されている証。購入時はちゃんと動いているか確認しておきたい。

ロールス・ロイス・シルバースピリット/シルバースパー(1980〜2000年)
ロールス・ロイス・シルバースピリット/シルバースパー(1980〜2000年)

クラシックカーを選ぶ際、手に追えるものを購入することが原則だが、ロールス・ロイスの部品は特に高価。手持ちのお金を車両代にすべて投じず、充分な予算を予期せぬ出費のために残しておきたいところ。中古部品を有効に使うのも手だ。

何より調子の良い、ちゃんと整備記録の残っているクルマを手に入れたい。これまで大切に乗られてきたことを示している。ボディやインテリアがくすんでいても、磨いて丁寧に掃除をすれば綺麗になることが多い。もちろん、サビやボディトリムの欠品、整備不良には気をつけたい。

ガレージの大きさも重要。このクルマは青空駐車場には適していないし、多くの車庫は奥行きが5m前後しかない。日常的な駐車のしやすさを考えると、20cmくらいはガレージには余裕が欲しい。

シルバースピリットとシルバースパーの路上での存在感は圧倒的。リラックスした雰囲気の走りは、優越感と優雅さでドライバーを包んでくれる。中にはこの車の価値に気づかない人もいるかも知れない。しかし、このクルマを運転していれば、そんなことも忘れさせてくれるだろう。

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